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裏千家淡交会ジュネーブ協会 山田博美


   ジュネーブは永世中立国として知られるスイス西部レマン湖畔にある、日本にもファンの多い人口20万人ほどの市です。国際機関が多いため、市の規模にしては国際色豊かで、特に人権、平和及び安全の部門を持つ国連欧州本部があり、多くの市民がそのことに誇りを持っている土地柄です。ここに1980年、欧州でも早い時期にジュネーブ同好会が誕生しました。現在は、イブ・ブラン会長の自宅、私が担当する在ジュネーブ日本国総領事館、そしてウルスラ・コーリが担当するベルン支所でそれぞれお稽古をし、時折週末に合同でお稽古をして親交を深めています。
  また、茶道の普及活動として、市内及び近隣の町の美術館やお城でお点前のデモンストレーションをしています。将来を担う児童、青少年向けの活動も重視しており、市立図書館で児童対象のプログラムに参加したり、領事館に中学生、高校生を招待して、異文化体験の授業に役立ててもらったりしています。今、こちらは日本の漫画ブームで、多くの若者にとって漫画が日本への扉になっていますが、茶道がもう一つの扉となるよう、漫画ファンが集う場所でも毎年ワークショップをしています。
  そして、春にニヨン、秋にベルンで、ローマ出張所の野尻命子先生ご指導の下、講習会を開催しています。スイス国内のみならず近隣諸国からも熱心な参加者が集まって、座禅に始まり、いかに落ち着いた心でお茶を楽しみ、さらにそれを日常生活に生かしていくかを学んでいます。まさにこれこそが鵬雲斎大宗匠ご提唱の「一碗からピースフルネスを」の出発点で、世界中で多くの土地が争いの場になっている現在、畳の上で平らかな心を求めていられる私たちは、それだけでも幸せです。そのことを忘れずにこれからも活動を続けていきたいと思っています。

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