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裏千家淡交会ロサンゼルス協会 会長 金井紀年


  果てしなく広がる大海原、北東に連なる山々は土肌を見せ、青空には椰子の緑が良く映える。当協会は映画産業で名高い人口一千万人のロサンゼルス郡に拠点を置いています。
  1952年、鵬雲斎大宗匠が当地に蒔かれた一粒の茶道の種は多くの教授者が幹となり、彼らの努力によって今では260余名の会員へと枝葉を広げています。
  当協会は2008年現在33名の教授者より成る教授会、平均年齢55歳の20名による幹事会を中心に、規約に基づき運営されています。会員は大多数が日本人及び日系人です。茶道を通じて日本人の心を再確認し、そこに安らぎを覚える者も多く、日本にいたころより継続して稽古している者のほかに、当地で初めて茶道の門を叩いた者も少なくありません。また、アメリカ人のほかにも多くの人種の会員を擁する当協会では、青年部とともに特に英語部を設けて英語での活動基盤も整えています。
  協会の通常行事としては、ロサンゼルス総領事はじめ日系団体より来賓を迎えての初点式、近郊の裏千家協会からも参加のある利休忌と宗旦忌、大寄せ茶会がまず挙げられます。8月に開催される二世週祭では隔年2日間にわたりデモンストレーションと呈茶を行い、日本文化の紹介や茶道普及の一翼を担っています。教授会では指導技能の向上を目指して各種勉強会も行い、一般協会員向けには茶道に関連した歴史、文化等専門講師を招いての講演会を企画して好評を得ています。また、各教授者は日常の指導の傍らそれぞれの地域社会においても大学等の教育機関や美術館、植物園等の日本祭の場でデモンストレーションに協力しています。
  業躰先生に遠路はるばるご指導に来て頂いたり、宗家での行事や講習会に参加する機会を得られる幸せに感謝しつつ、文化や価値観の異なる刺激のなかで当地での和敬清寂の実践に精進しています。



裏千家淡交会ロサンゼルス協会 松本宗静


  カリフォルニア州都サクラメントのカリフォルニア州立大学の図書館にある中谷宗菊記念茶室に、この度坐忘斎家元より庵号を拝領いたしました。
  中谷先生は、ロサンゼルスで長年修道された方で、病により他界された後、ご子息から母の思い出に是非茶室を寄付したいとの申し出があり、この茶室の建設が始まりました。
  一昨年春に茶室は静かな図書館内に八畳の広間、道具展示室を備えた「中谷宗菊記念茶室」として完成。茶室披き以来、2年の間に露地の緑は色を増し、枝葉も繁り、着実に茶室が大学に根付いている喜びを私たちも実感しています。現在、裏千家サンフランシスコ出張所のクリスティー・バートレット・宗榮駐在講師による稽古、デモンストレーション、レクチャーなど、この茶室での活動は活発に行われています。大学側の温かい、また誇りを持った協力に、喜びと感謝の念を深めています。
  そして本年(2008年)、ご子息の母を思う気持ちから生まれたこの茶室を通じて、より多くの人々に茶道の精神を伝えたいとの思いから、お家元にお願いし、庵号「嘉楽庵」を拝受することとなりました。庵号披露の茶会が、4月11日に淡交会サンフランシスコ協会とロサンゼルス協会、大学の協力の下に行われ、成功を収めました。本当に感無量の思いです。全てがお茶の縁でつながった心地よさに、疲れを忘れて大いに楽しませていただきました。当日、床にはお家元揮毫の「嘉楽庵」のお軸、茶碗は鵬雲斎大宗匠が若かりし日にサンフランシスコ講和条約の折の献茶に用いた茶碗、干菓子はボストンより届いた手作りのものと、どれを取っても心に残る取り合わせでした。大学の学長をはじめ、日本からも多くのお客さまを迎えられたことも嬉しい限りでした。この茶室に一番深い思いを寄せていらした、ご子息の感慨も一入だったに違いありません。
  これからも、この茶室から「一碗からピースフルネスを」の精神が発信され続けることを願ってやみません。


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