裏千家インターナショナル・アソシエーション(UIA)

2007年度研修旅行報告


(2007年11月2 日〜7日)





  2007年度UIA研修旅行は、「第4回東アジア茶文化シンポジウム」「第4回パネルディスカッション―東アジアの文化と平和―」の聴講で、ハワイ大学創立100周年記念行事のひとつとしてハワイ大学で開催され、 UIAの会員27名が参加いたしました。

 11月3日:ハワイ大学マノア校日本研究センター所長、ロバート・ヒューイ氏の司会・進行により、マノア校学長からの歓迎のご挨拶とホノルル日本国総領事のご祝辞に続き、千 玄室大宗匠様の基調講演で、中国での飲茶、韓国での薬茶、日本での緑茶、アジアにおける茶文化の共通性、重要性とその役割、まずは『喫茶去』から始まる世界平和を唱えられました。
  諸先生方のご講演は、いずれも、茶文化を深く広い視野から検証されたもので、歴史から始まり、大陸との交流が盛んであった沖縄に見られる陶器、唐宋時代の和敬を表す宮廷茶礼、ピースメーカーの役割を果たした国家儀礼としての茶の湯、利休の死にまつわる事実、実践して初めて解るお茶、そして 最後は、わび茶の哲学について、『正直につつしみ深く、おごらぬ様をわびという』原点にもどり、十牛図の説明と、 中国語で 朗読される盧仝の詩に耳を傾ける中で、心が豊かになるのを覚えながら、第一日目が終わりました。

  夕刻には、ハワイ大学のご招待により、キャンパス内で、各講師の先生方をはじめ、淡交会や海外支部・協会から参加された皆様や、ハワイ大学の皆様とご一緒に、和やかな夕食会に参加させていただきました。

 11月4日:前日に引き続き『アロハ』でスタートし、大宗匠様のご挨拶の後、講演が続きました。茶の湯が岡倉天心によって紹介されて以来、 また戦後大宗匠様が『一碗からピースフルネスを』を唱えられて以来、 世界の日本を見る目が変わって来たこと、政治的に中立な文化外交の必要性、日・中・韓の共通性と差異性を理解した上での国境の無い情報化社会、21世紀の選択について話されました。

  午後からのパネルディスカッションの目的は、日・中・韓の文化をあわせて新しい時代にどう向かうのか、その方向性、目標を見つけていこうとするものでした。『文化は世界に及ぼす無言の力である。お互いの国を見る目が異なり、物質が強調される現実の中で、政治的にではなく、ひとりひとりの人間が和を普及して行く事によって、言葉・習慣を乗り越えた結合があるのではないか』という問題提起に始まり、教科書問題、歴史認識の問題は、少しずつ共通の場に近づきつつあること、三つの国が一緒に対話・活動のできる第三の場所での象徴的な行事の必要性が話し合われました。また、市民の歴史の例として、島の文化と異文化の共存の知恵が見られる、ハワイや沖縄が度々取り上げられ、『他を自の如く扱う』という概念が強調されました。

  ディスカッションは会場の参加者の方にも広げられ、 UIAの会員からも活発な意見が出されました。日・中・韓の指導者が一堂に会して、大宗匠様のお茶を味わわれれば良いのでは、という意見も出ましたし、 大宗匠様のお働きはノーベル平和賞に値するものだという意見も度々出ました。

  最後に、パネルディスカッションのコーディネーター、金 容雲氏は、「国と国、人と人、そして人と自然の和を求め、許しの儀式の舞台を作ることが、私達にできることではないでしょうか。キーワードは、東アジアと文化と、人と自然との一体感です。私には、夢があります。」と締めくくられました。

  熱のこもったパネルディスカッションの後、私達 UIAも微力ながら、少しでも世界平和のお手伝いができるよう、 国際感覚を持った茶人であるべく、各会員が自己啓発しながら、成長して行けるように、お互いを助け合い補い合える、和気あいあいとした会に発展させて行きたいものだと、強く感じました。「 UIAにも夢があります。」

 11月5日:三日目には、記念茶会として、お茶室を訪問させていただきました。ハワイ大学内の寂庵、ホノルル日本文化センターの星光庵、裏千家ハワイ出張所の汎洋庵で、いずれもハワイらしい趣向で、ほっとしたお茶のひとときを楽しみました。夕刻の夕食会では、いつも縁の下の力持ちのお仕事をして下さっている、総本部の職員の皆様方とご一緒に、いろいろとお話しもでき、会員の日頃の感謝の気持ちをお伝えすることができ、たいへん有意義な形で、今回の研修旅行を終えることができました。

  大宗匠様、総本部・国際部の皆様、淡交会及び海外の支部や協会からご参加の皆様、ハワイでお会いした皆様、そして UIAの皆様、明るい未来が垣間見れたような、楽しい研修旅行をありがとうございました。この場をお借りいたしまして、心よりお礼申し上げます。



(文責:水嶋タミ子)