裏千家インターナショナル・アソシエーション(UIA)

2011年度研修旅行報告



  研修旅行2011は、平成23年5月10日、11日に北京の首都大酒店で催された「第6回東アジア茶文化シンポジウム、第6回パネルディスカッション−東アジアの文化と平和−」参加の旅であった。
  ここ20年間ほどで、北京は昔の面影を僅かに残す別世界の大都市に膨れあがったが、春先の風物詩である柳絮が町中を飛びかう風景には変わりはない。今回の研修旅行は昨年秋の事件、3月の大震災のあとの行事とあって、深い意味合いを持ったものと考えられる。
  5月9日(月)  大阪・関空、東京・羽田組に別れ北京に向かった。北京到着はそれぞれ午前・午後になり夕食会場で田村運営幹事はじめ関西出発組とお会いした。北京ダックのフルコースの手荒い歓迎を受け、やや食傷気味であった。北京に行く予定のある方は『同福林』へどうぞ。そののちホテルニューオータニ長富宮に宿泊。
  10日(火) 車、車(昔は自転車)のラッシュアワーの建国門橋を抜け北京駅を過ぎ崇文門付近の城壁を横目に見ながら首都大酒店へ。
  初日は各界からの祝辞、挨拶のあと大宗匠の東日本の大震災に対する各国の支援に対する御礼から始まり、日本文化は中国、韓国から基礎がながれてきて成り立っており、人類平和の為三カ国が手を合わせ、将来の世界平和の根底になる討論会が実現することを願われるとのご挨拶をされた。さらに松本外相、大畠国土交通相からのメッセージを伝えられた。


大宗匠のご挨拶 会場風景

  続いて行われた大宗匠の基調講演では、歴史的に中国、韓国の学、宗教から日本は成り立ってきたが、さらにお茶を通して文化交流がおこなわれ一碗のお茶が世界にひろがり、安らぎから平和、恒久平和を望むものであるとお話をなされた。
  休憩をはさみ、研究発表Tは筒井紘一教授の茶闘について、今までと違った視点からの報告があった
  昼食時には、天津、北京、大連同好会等の方々および各大学の学生の皆さんにより準備された呈茶席が設けられ、UIAメンバーはお水屋、お運びなど現地の方々のお手伝いをさせていただいた。

呈茶席にて 大宗匠、明石元国連事務次長をお囲みして

  午後の研究発表は3題で、研究発表Uは中国・駱芃芃常務副委員長による、茶は芸術の虹でこの懸け橋が深みを持つことを期待すると結論した。研究発表Vは韓国・崔官センター長による、「茶道と韓国人」とタイトルで長次郎、脇田直賢と茶道とのかかわりについて、そして最後の研究発表Wは関根秀治客員教授による茶道は総合文化、総合芸術(空間芸術、時間芸術)であり易思想は茶の湯の基底をなすものと述べられた。それぞれの研究発表には指定討論がなされ、野村美術館館長に就任された谷晃氏によるまとめがあり、あっという間に一日目のシンポジウムが終了した。詳しい内容については裏千家ホームページを参照されたい。
  会場を後にし、ホテルニューオータニ長富宮に戻り、大宗匠主催の大晩餐会が催され、音楽、変面の出し物を楽しみながら過ごさせてもらった。



  11日(水) 二日目は重要人物通過の為の交通渋滞を経験しながら会場へ。
 大宗匠の「お互い心を知り合いとりわけ茶道をとおし恒久平和をつくりましょう」というご挨拶でパネルディスカッションが開始された。
  まず、明石康元国連事務次長による基調講演が行われた。本日は大震災から2ヶ月目であり各国の深い同情、強い支援、励ましがあり国境を越えた人類的意識は強くなってきている。歴史を振り返りながらご自身の経験談を踏まえ数々の問題提起をなされた。
  明石氏の基調講演のあと金容雲氏の司会でパネリスト劉徳有、崔成泓、修剛各氏による東アジアの文化と平和についてそれぞれ発表がなされた。
  劉氏は「和」の実現のため 広げよう交流の「輪」をのタイトルで話された。その中で侘び茶についての発言のなかで藤原定家の『見渡せば 花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕ぐれ』と藤原家隆『花をのみ 待つらむ人に 山里の 雪間の草の 春を見せばや』をそれぞれ『不見春花美、亦無花紅葉艶。惟有秋暮下、海浜小茅庵』『苦待花報春、莫若覓山間。雪下青々草、春己早盎然』と漢詩で紹介された。特に後者は五言絶句で韻を踏んでいてこれらの漢詩にたいして会場の賞賛を浴びていた。
  崔氏は文化交流が平和を構築し「和而不同」の精神がその基調となすべきであり茶道裏千家の文化運動は平和運動のよい例だと思うとまとめられた。
  昼食時の呈茶席は2日間で延べ400名近くみえたということであったが、中国各地の多くの若い学生さんたちがお茶に興味をしめしていた。
  午後のパネリストの修氏は異文化コミュニケーションの立場を持つ若い人を育てる必要性が増し、自国の文化と同様に異文化を理解することが平和に貢献できると主張された。

二日目呈茶席 パネルディスカッション風景

  討論会では各パネリストの追加講演およびまとめが行われ。その後質疑応答ではまず会場から、UIA望月さんが先に紹介された漢詩を絶賛され、中国の方の感覚などについて質問された。劉氏から回答がなされ、ますます印象を深くした。その後指名質問、総評がおこなわれた。質問者の日本語の理解度に感心させられるばかりであった。
  最後に大宗匠が、『今回の会で心が豊かになったように感じ、人間関係は国が違っていても共通のものがあれば幸せになます。それぞれの心の中で、自身で今回得たものを咀嚼し、血となり肉と成ることを期待します。』とご挨拶なされた。
  こうして壮大なテーマのシンポジウム、パネルディスカッションが閉幕した。
  UIA懇親夕食会は日壇会館であり関根副理事長のご挨拶あと宮廷料理を楽しんだ。12日(水)天気もよく黄砂もほとんどなく、各自北京観光(万里の長城 故宮 胡同 首都博物館 等)を楽しんだ。
  13日(木)東京(望月運営幹事他7名)、大阪〈田村運営幹事他10名〉組それぞれ帰国。
  大変充実した意義深い北京滞在でありましたが、知りえた知識が消化不良にならないようにゆっくり理解していきたと思っております。
  研修旅行中お世話になりました関係各位に深く感謝いたします。 謝謝。

(文責:中牟田博敬276)

日壇会館UIA懇親会