第38回裏千家ハワイセミナー


ホノルル到着後、ワイキキビーチ沿いのレストラン、
「オーシャン・テラス」で結団式

  「第38回裏千家ハワイセミナー」がホノルルにて7月18日から25日まで開催され、茶道裏千家淡交会顧問 天江喜七郎氏を団長として淡交会会員、学校茶道の招待学生12名を含む83名が参加しました。
  本年はみどり会(裏千家学園外国人研修コース)が設立40周年を迎えるにあたり、初めての同窓会がホノルルで開催され、ハワイ、北米をはじめヨーロッパ、ニュージーランドから総勢61名の同窓生が参集しました。
  7月19日、ハワイ出張所内「汎洋庵」でのみどり会40周年記念茶会にはハワイセミナー団員も招待され、また反対にハワイセミナーの各行事にみどり会同窓生が参加するなど、例年にも増して国際交流の輪が広がりました。

ハワイ出張所の汎洋庵にて開催されたみどり会同窓会の記念茶会


シカゴからの先輩みどり会生が半東、ハンガリーの後輩が点前。
初顔合わせながら息の合った亭主ぶり


  7月20日、セミナー第1日目はハワイ大学アート・オーディトリアムにて講義と茶道実技研修が行なわれました。
  大宗匠の開講の辞に続き、第1講目はみどり会同窓生のジャネット・池田博士(現在、ワシントン・アンド・リー大学準教授、全米日本語教師会会長)が、「言葉、そして言葉を超えて」と題して講義を行ないました。池田教授は千宗室奨学金受給者として1980年から3年間みどり会に在籍、その経験から茶道の素晴らしさを語られました。

講義要旨:現在、大学の教授を務めながら、お茶も教えている。現代の学生は、多種多様の文化や言語を学ぶ必要性があり、茶の湯は真のグローバルな人間形成に役立っている。自分は二人の恩師すなわちハイスクールの先生と裏千家のお蔭で日本語、日本文学、茶の湯を学ぶ事が出来た。みどり会では外国人も美と形式と伝統の世界にふれ、規律、集中力、自己反省力などを身に付ける機会が与えられ、それらは現在も自分の人生に役立っている。大宗匠様、お家元様はみどり会生に自分自身を高める機会、世界中に生涯の友人を作る機会まで与えてくださった。全員が何か恩返しをしたいと心から思っている。

ハワイ大学OBメンバーによる茶道実技を解説される大宗匠



ジャネット・池田教授 


  午後は日本文化センターにて淡交会ハワイ協会主催の昼食会と交歓茶会が開催されました。
 同センター内の茶室「星光庵」には本席に濃茶席、立礼に薄茶席が設けられ、セミナー団員やみどり会OB、ハワイ近隣諸島からの協会会員も交えて、心づくしの一碗を楽しみました。

日本文化センター
歓迎の挨拶をされるハワイ協会
黒川曙美会長


天江団長昼食会にて学校茶道の学生と談笑される大宗匠


「星光庵」にてハワイ協会主催の濃茶席



立礼席


  7月21日、セミナー第2日目はイースト・ウエスト・センター(EWC)研究員のジェラルド・フィニン教授の講義で始まりました。太平洋諸島開発プログラム部門に所属のフィニン教授は「イースト・ウエスト・センターの任務−平和で豊かで公正なアジア太平洋コミュニティーを築く為の貢献」と題して写真を使いながら分かりやすい講義をされました。

講義要旨:アジア太平洋地区とは主にポリネシア、ミクロネシア、メラネシアのことでハワイ諸島はポリネシアに属する。それぞれの地区が何千もの島や珊瑚礁で成り立ち、文化、言語、習慣が異なる。島は自然資源が少なく、海に囲まれて孤立していることが多いのでEWCや日本のJICAのような組織が様々な形で援助をしている。島々にとって西洋の技術、考え方、見方が大いに役立つこともあるが、独自の文化や伝統の維持、継続も大切である。
EWCの主な役割は共同研究、教育、対話である。

  第2講目はハワイ大学のジョナサン・オッソリオ教授が「ハワイの自治−先住民の価値観や存在感をハワイに取り戻す運動」と題し、自らが作詞・作曲した歌を披露しながら講義をされました。

講義要旨:ハワイアンのルーツは確かではないが、元々は現在のタヒチやサモア方面からカヌーで海を渡り、ハワイ諸島に上陸し定住した説が一般的である。口述歴史によるとポリネシア文化は非常に古いとされるが、1778年にイギリスのクック船長が上陸した事が西洋人と接触した最初である。その後、カメハメハ大王によってハワイ諸島が統一され王国となった。しかし白人がもたらした伝染病によって免疫のなかった先住民は絶滅の危機にさらされることもあった。やがて米国はハワイを貿易港、軍事基地として望んだため、ハワイは一方的に米国の領土となり自治権を失った。米政府によりハワイアンを援助する為の制度、組織が設立されたが、現状では機能していない。米国とハワイでは価値観が違いすぎる為、ネイティブ・ハワイアンが祖国ハワイの統治をする事が一番望ましい。

  2日間のセミナー終了にあたり、ハワイ大学のピーター・田中教授が閉講の辞を述べられました。今年で退官される田中教授はこれまでの裏千家の大学に対する協力に感謝を述べると共に、今後もより一層ハワイ大学と裏千家の関係が強く続くよう希望していますと言葉を結ばれました。

  その後、裏千家、ハワイ大学、イースト・ウエスト・センターからそれぞれ団員一人ひとりに修了証書が授与されました。



  午後、一行はハワイ大学のキャンパス・センターのカフェテリアにて昼食後、ハワイ大学茶道部、茶道部OBによる茶会に臨み、ハワイならではの設えの茶席で一碗を楽しみました。

ハワイ大学内茶室「寂庵」



立礼席


大宗匠を囲んでハワイ大学茶道部OBのメンバー


  同日夕刻からはシェラトン・ワイキキ・ホテルにおいて大宗匠主催の晩餐会が開催されました。
  大宗匠は挨拶の冒頭で「裏千家茶道の海外普及を目的に設立したみどり会の同窓生が今回初めて一堂に会し、感無量です。『みどり会』の名付け親の故登三子も喜んでいると思う」と述べられ、みどり会OBの大きな拍手を受けられました。




 挨拶をされる駐ホノルル加茂佳彦日本総領事、ハワイ大学ヴァージニア・ヒンショー学長

晩餐会にてフラのエンターテーメントを楽しむ参加者


  7月22日、全ての公式行事を終えた団員は、ハワイでのオプショナル・ツアー参加や市内を散策するなど、それぞれに自由時間を楽しみました。ハワイ出張所の「汎洋庵」ではセミナー団員のためにハワイ協会会員による呈茶席が設けられました。



「汎洋庵」にて

  7月23日夕刻、宿泊ホテル「ザ・ブレーカーズ」のプールサイドにてハワイセミナーを締めくくる「さよならガーデン・パーティー」が行なわれました。
  大宗匠とともにハワイアンの音楽やフラ、くじ引き、学生のエンタテーメントで盛り上がったパーティーで団員は最後の夜を満喫しました。


  招待参加した学生・生徒の皆さんの研修レポートを掲載いたしました。
  こちらからご覧ください。