第10回東アジア茶文化シンポジウム
第10回パネルディスカッション-東アジアの文化と平和-


  10月30日(金)および31日(土)、京都市において「第10回東アジア茶文化シンポジウム」ならびに「第10回パネルディスカッション-東アジアの文化と平和-」が開催されました。
  このシンポジウムは、千 玄室大宗匠の発意により、茶文化研究の学術的交流と東アジア地域の友好関係の更なる充実を図ることを目的に始められました。2004年に中国・天津市において第1回を開催し、その後は日中韓およびハワイの各都市を巡回。第10回となる本年は初の京都開催となりました。
  来賓、日中韓はじめアジア各地の裏千家淡交会及び海外協会会員、裏千家インターナショナルアソシエーションや上海留日同学会のメンバー、近隣地域の各大学の学生など延べ420名が参加しました。

【東アジア茶文化シンポジウム】

  30日、第10回東アジア茶文化シンポジウムが立命館大学の朱雀キャンパスにおいて行われました。午前9時、関根秀治裏千家事務総長・一般社団法人茶道裏千家淡交会副理事長の司会のもと開会。まず始めに大宗匠より主催者として歓迎の挨拶が述べられました。
  次に本事業の共催団体である立命館大学を代表して、長田豊臣 学校法人立命館理事長が挨拶をされました。

長田理事長挨拶

  来賓として、山内修一京都府副知事、門川大作京都市長、金 現煥駐日本国大韓民国大使館韓国文化院院長、陳 諍中華人民共和国駐日本国大使館参事官より祝辞をいただきました。

山内副知事門川市長

金院長 陳参事官



◇主  催一般社団法人茶道裏千家淡交会

立命館大学
◇後  援外務省

中華人民共和国駐日本国大使館

駐日本国大韓民国大使館 韓国文化院



  またこの度、茶道裏千家と韓国・釜山外国語大学の間で、茶道文化研究と普及・実践のための国際交流協定が締結され、大宗匠と鄭 海麟釜山外国語大学総長、白 聖愛釜山外国語大学理事長により協定書の交換が行われました。


左から白理事長、大宗匠、鄭総長

  大宗匠の基調講演に始まったシンポジウムは『東アジアの茶の精神 ―儒教・道教との関連―』をテーマに進行。本テーマに基づき、大宗匠と彭 林清華大学中国礼学研究センター主任による基調講演が行われました。大宗匠は儒教の教えである「仁・義・礼・智・信」の意味について身近な例を挙げて解説。「茶の道によって人間にとって大切な心を育み、それを社会に活かしましょう」と締めくくられました。彭 林氏は、中国文化における儒家の礼儀と日本茶道の礼儀を比較し、その共通点・違いを中心に講演されました。


彭 林氏 基調講演

  基調講演の後、張 建立中国社会科学院教授の進行のもと、第一線で活躍される研究者の研究発表・指定討論が下記の内容で行われました。


第10回東アジア茶文化シンポジウム

司会 関根秀治 茶道裏千家淡交会副理事長
進行 張 建立 中国社会科学院教授
◇基調講演T千玄室大宗匠
◇基調講演U「儒家の礼儀と日本の茶道」
    彭 林 清華大学中国礼学研究センター主任
◇研究発表T「茶道と瞑想」
    李 基東 成均館大学校教授
      指定討論: 筒井紘一 京都造形芸術大学教授
◇研究発表U「道教と茶、儒教礼式と茶」
    加地伸行 立命館大学フェロー
      指定討論:朴 銓烈 韓国・中央大学校名誉教授
◇研究発表V「東アジア社会の人間関係にある『縁』」
  尚 会鵬 北京大学国際関係学院教授
      指定討論:関根秀治 平安女学院大学伝統文化研究センター所長兼教授
◇研究発表W「茶と礼楽」
  中西 進  京都市立芸術大学名誉教授
      指定討論:徐 一平 北京日本学研究センター長
◇総評 張 建立 中国社会科学院教授

進行・総評:張 建立氏

【研究発表】
研究発表T 李 基東氏(指定討論:筒井紘一氏)

研究発表U 加地伸行氏(指定討論:朴 銓烈氏)

研究発表V 尚 会鵬氏(指定討論:関根秀治氏)

研究発表W 中西 進氏(指定討論:徐 一平氏)


【呈茶】
  宗家による呈茶席が設けられ、国内外の淡交会会員有志がお手伝いし、参加者をもてなしました。


【日中韓平和祈念献茶式】
  夕刻からは京都ホテルオークラにおいて日中韓平和祈念献茶式が執り行われました。日本、中国、韓国の国歌独唱の後、厳かな雰囲気の中、大宗匠が三カ国の国旗に一碗を捧げました。


【大宗匠主催晩餐会】
  献茶式後には、大宗匠主催晩餐会が同ホテルにて盛大に行われました。大谷 實学校法人同志社総長の祝辞に続き、鄭 海鱗釜山外国語大学総長の発声で乾杯。国内外から集った参加者は和やかに交流しました。

大谷 實総長祝辞鄭 海鱗総長の発声で乾杯


大宗匠を囲んで


【パネルディスカッション―東アジアの文化と平和―】
  翌31日も立命館大学朱雀キャンパスを会場として、第10回パネルディスカッション―東アジアの文化と平和―が開催されました。
  午前9時、張 振興中国日本友好協会都市・経済交流部副部長と秋山幸子公益財団法人日本国際連合協会事務局長の司会で開会。大宗匠、渡辺公三学校法人立命館副総長、王 秀雲中日友好協会副会長からの主催者挨拶に続いて、来賓を代表し山田 宏前衆議院議員によるご祝辞をいただきました。



◇主  催一般社団法人茶道裏千家淡交会

立命館大学

中国日本友好協会

公益財団法人日本国際連合協会
◇後  援外務省

中華人民共和国駐日本国大使館

駐日本国大韓民国大使館 韓国文化院

中国国際連合協会

韓国国際連合協会





渡辺公三氏王 秀雲氏


山田 宏氏


【基調講演】
  金 容雲元韓日文化交流会議韓国側委員長により、「茶道と北東アジアの平和」と題し基調講演が行われました。「平和への第一歩は、民族がそれぞれ異なる文化・考え方を持っているということをまず認識することである」と述べられるとともに、世界の茶人が同じ時に茶を楽しみながら平和について考える「世界茶の日」の設定を提案されました。

金 容雲氏


【ゲストスピーチ】
  村田晃嗣同志社大学学長によるゲストスピーチも行われました。「新しい価値観や文化を受け入れる民間レベルのグローバル化には寛容さが不可欠であり、その寛容さは人との交流や自らの反省といった日常の場面から形成されるものである」と、自身の茶道稽古の体験談などを踏まえて語られました。

村田晃嗣氏



第10回パネルディスカッション―東アジアの文化と平和―

司会:張 振興 中国日本友好協会都市・経済交流部副部長
◇基調講演「茶道と北東アジアの平和」
     金 容雲 元韓日文化交流会議韓国側委員長
◇ゲストスピーチ 村田晃嗣 同志社大学学長
◇意見発表1「歴史の見方を学び合う大切さ」 
     加藤千洋 同志社大学大学院教授
◇意見発表2「東アジア文化共同体の構築―その障壁、可能性及び方法―」 
     唐 永亮 中国社会科学院日本研究所文化研究室副主任
◇意見発表3「易地則皆然」精神と異文化の理解
     朴 明欽 釜山外国語大学校教授
◇意見発表4「サスティナビリティの視点から東アジアの和平と発展を考える」
     周 瑋生 立命館大学教授
◇パネルディスカッション  コーディネーター:鄭 求宗 東西大学校日本研究センター顧問

     パネリスト:加藤千洋氏、唐 永亮氏、朴 明欽氏、周 瑋生氏
◇総評     鄭 求宗氏



【パネルディスカッション】
  パネリストを務める研究者による意見発表に続き、鄭 求宗東西大学校日本研究センター顧問の進行のもとディスカッションが行われ、東アジア地域の相互理解・交流促進について、政治・社会・歴史など様々な観点から議論が深められました。

加藤千洋氏唐 永亮氏


朴 明欽氏周 瑋生氏


コーディネーター:鄭 求宗氏


ディスカッション


質疑応答


  今回パネリストを務められた周 瑋生氏の提案により、10回に亘る本事業の今後の方向性を確認するとともにその成果を広く社会に発信することを目的として、「文化と平和」京都宣言が発表されました。日本、中国、韓国それぞれの学生の代表が壇上で発表し、参加者の賛同により採択されました。




「文化と平和」 京都宣言

  私たちが、千玄室大宗匠の発意により、2004年から日本、中国、韓国で巡回開催してきた「東アジア茶文化シンポジウム」ならびに「パネルディスカッション−東アジアの文化と平和−」は、本日、ここ京都の地で第10回を迎えました。
  この間、日中韓3カ国の研究者、文化人が一堂に会し、茶文化研究の学術的交流と東アジア地域の友好関係の促進、また世界の平和と安定のための文化の役割と可能性について議論を深めてきました。
  「和は、天下の達道なり」、「和をもって貴しとする」。茶道は世界平和に貢献できる文化の一つであり、文化は平和と幸福の礎であることを改めて確認しました。
  これまでの成果を踏まえ、私たちは、以下のように宣言します。
  1.私たちは、東アジアの友好関係を促進するために、茶道精神及び茶文化を社会に発信し続けます。
  2.私たちは、ユネスコの文化多様性宣言を尊重し、東アジア諸国の相互理解に欠くことのできない「和」の精神を大切にします。
  3.私たちは、「一碗からピースフルネスを」を目標に、世界の人々の文化交流の促進と平和共存の実現に努めます。



  閉会の挨拶では、大宗匠は「これまでの成果を心に留めておくだけでなく、行動に移し、周囲に働きかけていくことが重要である」と述べられ、参加者は本行事の意義を再認識しました。



【呈茶席】
  前日の東アジア茶文化シンポジウムと同様に呈茶席が設けられ、参加者は一碗を楽しみました。