お家元と 一問一答




一問
1 帛紗の四方捌きの意味をお教え下さい。
一答
帛紗の四方を捌くのは、陰陽でいうところの東西南北を清めるということです。台子の中に、天板、地板で乾坤があり、柱が四本で、東西南北春夏秋冬になります。そこに全部陰陽五行が入っていて火の卦があり、水の卦があり、木の卦があり、金の卦がありすべてがあります。その前に座り四方を捌くのは、東西南北の方位を清め、春夏秋冬一年を清めると思っていただければよいでしょう。
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一問
2 内隅、外隅の使い分けをお教え下さい。
一答
風炉台子を基準にそこから派生した点前は主として外隅狙いになります。そうでないものは内隅狙いになります。小習の前八ヶ条の場合は、全ての取り合わせや扱いが定まったものです。後八ヶ条はどちらかというと、はたらきの点前になります。ですから入子点は小間の場合外隅になったりいたします。続き薄茶で炉の場合どうするかというと、広間は内隅狙いになりますし、しかし台子・長板等を使用した時は外隅狙いで小間は外隅狙いという形になってきます。点前によって、はたらきの意味をもつ点前はその場その場によって変わります。小習の前八ヶ条のように、茶碗・茶入を荘る点前、貴人をもてなす点前であるなど、定まっているものは全て風炉台子を基準とされております。
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一問
3 薄茶点前ははじめに茶道口で挨拶をしますが、濃茶は点前の途中で主客が総礼をします。その意味をお教え下さい。
一答
これは玄々斎がそのように統一されました。それまでは濃茶も茶道口で挨拶をし、更に柄杓を引いて挨拶をしていたとのことです。しかし、亭主と客との挨拶の重複をさけることで切り替えられました。
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一問
4 棚に荘る時、棗は一手で荘りますが、蓋置は必ず扱って荘るのはどのような理由があるのでしょうか。
一答
台子総荘りの皆具の扱いが基本です。それ故、皆具の建水から蓋置を取り出す時の扱いがそのまま棚点前でも略されることはありません。
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一問
5 貴人点で、道具を拝見に出す時、濃茶では茶杓を仕覆の上、薄茶では帛紗の上に乗せて出すのは何故ですか。
一答
貴人点では、茶杓は貴人のみに使ったものです。それ故、畳に直接置きません。また亭主側の人間である半東が貴人に取り次がせていただくということから、特別の茶杓と考えて仕覆、帛紗に乗せます。貴人清次の場合は、貴人だけではなく、お伴にも同じ茶杓を使いますし、客側の人間であるお伴が道具を取り次ぎますので、へりくだりすぎることはしません。ですから仕覆、帛紗には乗せません。
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一問
6 3月に釣釜をするのは何故ですか。
一答
3月は釣釜でなければならない、という訳ではありません。
釣釜は天井の蛭釘(ひるくぎ)から鎖で釜を釣るものですが、基本的には3月の彼岸から4月の中旬頃までします。
なぜ釣釜をするのでしょうか。それは東風(こち)が吹く時季だからです。その時期に釣釜を掛けておくと、かすかな風が家にあたっただけでも釜がゆっくりと揺れたりいたします。その揺れにしたがって春がどんどん近づいてきているということを亭主も客も感じ合えますね。春風が渡り出したのを実感できる時節に適ったしつらえなので、期間については地域性があってかまいません。
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一問
7 点茶盤でできるお点前の範囲をお教え下さい。
一答
初炭・後炭・濃茶・薄茶の四つです。これは台子の総荘をそのまま立礼の形に写しているためです。そういう意味から言えばもっと他にできるのではないかと思われるかもしれませんが、台子の総荘で茶碗荘や貴人点をしないのと同じことですので、この四つに限られます。
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一問
8 大寄せの茶会などで、最初から茶入、水指が荘ってある場合、釜、茶入、水指いずれから拝見すべきでしょうか。
一答
茶事と違い茶会ですので、まずは釜から拝見します。その時、同時に荘ってある物があったとしても、本来は釜しかない状態が標準な訳ですから、釜から拝見して下さい。
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一問
9 茶通箱の点前で、最初、箱に茶入を背中合わせに仕込む意味をお教え下さい。
一答
これは、亭主が用意したお茶も客が用意したお茶も差をつけず同格に扱うという意味です。どちらも向きをそろえたら、前のものが主で、奥のものが従ということになります。茶通箱は回して扱います。茶入を背中合わせにすることでどちらも正面を向けるようにとのことで考えられました。
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一問
10 後炭所望で、巴半田の灰に巴に描くのは何故ですか。
一答
巴というのは水の卦です。ですから火が乗るところに水の卦を描く、それによって陰と陽を出会わすということです。
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一問
11 初炭手前、後炭手前には「手前」の文字が使われますが、「点前」と区別しているのは、お茶を点てないからでしょうか。
一答
本来は「手前」と書く言葉の方が古いようです。この「手前」という言葉はどこから出てきたかというと「建前(たてまえ)」から出てきたとの説があります。
建築物の「建」、前で何かを建てる、作り上げる、そういう意味で「建前」から始まって、自分の目の前で手で成すというところから「手前」となりました。しかし、寺の作法の中には、中国に絡んだお茶を点ずる「点茶」という言葉があります。ここからお茶を点てる時に「点前」という言葉が使われるようになりました。
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一問
12 御園棚の場合、お点前茶碗は古帛紗に乗せてお出ししますか。また、御園棚の点前で、茶杓を拭いた帛紗は右に置きますか。釜の蓋を開けた帛紗は右・左どちらに置きますか。
一答
御園棚の本歌は家元の又新の席で使われています。又新でお客様の前に置かれている机は「黒塗り(掻合せ)」ではなく「真塗り」ですので古帛紗の扱いとなります。又新は淡々斎の古稀のお祝いで建てられた部屋ということで真塗りの机が置かれております。それ故、古帛紗に茶碗を乗せたままお出しします。古帛紗の扱いは又新に限ると覚えて下さい。
それから、茶杓を拭いた帛紗は右に置き、釜の蓋を開けた帛紗は左に置きます。
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一問
13 貴人点で、高杯にお菓子を盛る場合、亭主・半東いずれが出すのでしょうか。
一答
これは亭主が持って出します。お茶は半東が取り次ぎますが、最初にお菓子を持って出るのは亭主の役目です。
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一問
14 お茶席用の大きな傘は外(庭や公園など)でのみ立てられるものですか。屋内で使用してはいけないのでしょうか。
一答
傘ですから、基本的には外で使用します。しかし、ホテルなどの屋内に野点の風情を取り入れるような場合にはよいと思います。傘だから外にしか立ててはいけないというものではありません。部屋の中でも雰囲気づくりで上手に使用して下さい。
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一問
15 風炉の炭手前の折、初炭で灰を月形に切るのはなぜですか。
一答
茶事で初炭の時、その灰形に灰匙の先で月形を切ることは「もうこの灰形は他の客を迎えては使いません」ということです。一期一会の気持ちで月形を切る訳ですね。それ故、何席も行う大寄せの茶会では月形を切らずに客を迎えます。
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一問
16 貴人点薄茶で半東が貴人にお菓子をお出しする位置はどこでしょうか。また、貴人茶碗はどこにお出ししますか。お教え下さい。
一答
前にお答えしました様に、亭主がお菓子を持ち出し炉畳にお出しします。半東は、点てられて定座に出された貴人茶碗を炉畳に座って取り次ぎ、お菓子が出された同じ位置にお出しします。
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一問
17 花月の役と席順を決める時、水屋で折据を回しますが、折据はどちら回しにしますか。また、その時、扇子を置く位置は膝前ですか、それとも膝横でしょうか。
一答
水屋での約束事ですので、それまで決める必要があるかといえばそれまでになりますが、やはり折据は右回しで、扇子は右膝横に置きます。
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一問
18 和親棚の点前について。大中小の棚の置き方に決まりはありますか。また、点前は御園棚、春秋棚に準ずればよいのでしょうか。
一答
置き方に決まりはありませんし、お点前もお好きなようになさって下さい。但し、一応の目安として御園棚などの作法をなさってみてかまいません。和親棚は茶道具ですけれども家具でもあり、家具でありながら茶道具にもなるものです。名称が必要だということで「和親棚」と名付けましたが、発案のもとは仙腰a尚の「○△□」と書いてあるお軸です。
因みに、椅子を定めなかったのは、椅子を定めると高さが決まり、高さが決まるとどの棚を真ん中に置くかが決まってしまうからです。お使いになる方の楽しみを奪うことなく、お好きな配置で自由自在にお茶を楽しんでいただけるようにと考案しました。
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一問
19 濃茶の席に招かれましたが、体調が思わしくない場合、客としてどのようにしたらよいでしょうか。お教え下さい。
一答
どのような体調かにもよりますが、感染性のあるような症状でしたら、茶会に行かれること、席に入られることも遠慮されるのがマナーです。軽い症状でしたら、亭主側に事情を述べて別の茶碗でお茶をいただくことも方法です。ただ、それも亭主との平素の関わり合いや親密度によって判断すべきことです。大事なことは、一人の特別な所作によって一座の雰囲気を壊して不愉快なものにしてはならないということです。平素からの健康管理が大切ですね。
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一問
20 一会の茶事で、薄茶ではお茶を飲む直前にお菓子をいただきますが、濃茶では懐石に続いてお菓子をいただき、中立を経て濃茶を頂戴します。濃茶ではなぜ点前の場面でお菓子が出てこないのでしょうか。
一答
一会の茶事の本意は、お招きしたお客様に濃茶を差し上げることです。空腹を癒すために懐石を、続いてお菓子もいただきます。中立でお客様はこれから濃茶に臨むための心身の準備を整え、蹲踞も使い、心静かに席入りをしてお茶をいただきます。この場面でお菓子が出されますと座がさわがしくなり、締まりのないものになりかねませんので、前席でお菓子が出されます。薄茶の席は、煙草盆や干菓子も出て、「どうぞお寛ぎ下さい」との意味も含め、和気あいあいの場づくりに変化いたします。そこが濃茶と薄茶の違いです。
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一問
21 洋装で茶席に入る時、白のソックスに履き替えるのが約束でしょうか。
一答
約束ではありません。白のソックスが白足袋の替わりとお考えなのかもしれませんが、心構えとして、外から履いてきた、云わば道中のものを清潔なものと履き替えることが大切です。心身ともに清浄・清潔にして臨むことが第一ですので、ソックスは必ずしも白色にこだわらず、他色のものでも構いません。
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一問
22 茶筅通しの意味をお教え下さい。
一答
茶筅通しは、“その席中のお湯に慣らす”ということです。例えば、皆さんが入浴される場合、お湯の温度も確かめずに突然湯船に入るような方はいらっしゃらないでしょう。茶筅は予め水屋で穂先が折れていないかを確かめ、次に軽く水にくぐらせ清め茶碗に仕組みますが、席中のお湯に出会うのは点前座が初めてです。ですから、最初の茶筅通しはそのお湯に出会わすことによって準備運動として身をほぐしてあげるということです。茶筅通しの際、いきなり茶筅を強く振る方がいますが、それはよくありません。最初は軽くサラサラとお湯に馴染ませればよいのです。そして、今一度、客の前で穂先に粗相がないかを確かめます。
戻ってきた茶碗はおしまいの挨拶をして、その時に水で茶筅通しをします。この時は茶筅の穂先に付いたお茶を落とすようにして振ります。最初の茶筅通しと、後の茶筅通しの意味の違いをしっかりと理解して下さい。
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一問
23 貴人清次花月で最後まで貴人に「月」が当たらなかった場合、仕舞いつけはどの様にしたらよろしいでしょうか。
一答
貴人清次濃茶付花月と違って、貴人がまったくお茶をいただかない場合も出てきますね。
その場合でも仕舞い付けは貴人に「月」が当たったとみなして、片付けます。貴人が仕舞い「花」でしたら、湯を入れるのを略し、水を茶碗に入れて茶筅通し、一度上げの二度打ちして、水を建水にあけます。お次が仕舞い花の場合は、湯を茶碗に入れ、建水にあけて、次に水を入れ、茶筅通しをします。
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一問
24 室内にて、玄々斎創案の立礼式で野点の風情にして茶会を催してもよいでしょうか。
一答
基本的には致しません。玄々斎好立礼点茶式法を簡略化した御園棚や知新棚、春秋棚、そして和親棚などは、野点や室内の立礼用の棚として用いられていますが、あくまでも薄茶点前のみのものです。玄々斎の立礼は座敷のしつらえとして考案された式正なもので、茶事を催すことも出来る床構えのある畳敷きの席で行うのが定法ですので、野点の風情は好ましくありません。
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一問
25 中置で荘り物をしてよろしいでしょうか。
一答
名残りの趣向としての中置と荘り物の点前とを組み合わせますと、いわば趣向が重なり合います。従いまして、荘り物は定据え(じょうずえ)でなさった方がよいでしょう。主題(テーマ)がぼやけてしまいますので、趣向が重なるのは避けるべきです。
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一問
26 炉の茶通箱付花月の拝見物を出す時、四つ出しと習いましたが、どのような出し方
でしょうか。また、風炉も同様でしょうか。
一答


このような拝見物の出し方を四つ出しといいます。
風炉では炉のように四つ出しにせず、棗、茶杓、大津袋、茶通箱と横並びに出します。
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一問
27 続き薄茶はどういう場合に行われるのでしょうか。
一答
正午の茶事では、客側から「何々のため、続いて薄茶をいただきたい」との所望があった場合に行われる「働き」です。実際に一会の茶事におよばれして、急にいわば“後炭を略して薄茶をいただきたい”と亭主に申し出る訳ですので、亭主の「客を招く気持ち・覚悟」を思うと如何なものかと思います。しかし、当日何があるか分かりません。その旨を伝える正客と、それに対応する亭主との呼吸は筆に託せません。
朝茶事、夜咄の茶事は続き薄茶が長時間になることを避ける意味での約束事ですから、亭主の方からその旨お断りして後炭を略し、続き薄茶となります。
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一問
28 葉蓋の点前に用いる水指は末広籠花入の受け筒が約束でしょうか。また、梶の葉以外の葉で何が使えるでしょうか。
一答
黒塗りの檜の曲に切箔を散らした受け筒を玄々斎が七夕の趣向として梶の葉を蓋にして水指として用いたのがはじまりです。しかし、運び点前に適した水指ならば他の焼物の水指でも構いません。
梶の葉は古来から神木として七夕の歌を詠むのに使われたと言われていますが、点前として他に里芋、蓮、桐なども用いることができます。苦汁(にがじる)や臭いのある葉は適しません。
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一問
29 葉蓋や洗い茶巾の点前で客を迎える時、何か心がけることがありますか。
一答
いずれも夏に涼味を味わう点前です。青々とした葉にしっとりと水を打った葉を水指の上に乗せ、運び出す葉蓋点前。馬盥や平茶碗に水を七分目程張って、清潔感あふれる茶巾を入れて涼しげな水の面を見せることで酷暑のもてなしとする洗い茶巾の点前。双方、見た目と建水にあける水音が一層涼しさを演出します。
この時、もてなす茶室が広すぎますと葉に打った露、葉の扱い、茶碗の中の水、建水にあける水音が客に聞こえませんので、せっかくの趣向が半減してしまいます。涼しさの演出に関しては、ただ点前をするだけではなく、お客様のことと設営する場のことをしっかりと考えることが肝心です。
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一問
30 切掛風炉にて初炭所望をしてもよろしいでしょうか。所望する折、亭主は炭斗を持ち出し定座に置いて、坐る位置は畳の中央でしょうか。それとも畳の中央より客付寄り右側で置いてから風炉正面に寄りますか。また灰器を用いていませんが、帛紗はやはり畳敷合せ角に置きますでしょうか。
一答
切掛風炉では灰器を使用しないので、所望が出来ないとお考えなのかと思いますが、所望なさって結構です。
亭主が坐って炭斗を置く位置は畳中央に坐り、炭斗を定座に置いてから風炉正面に寄ります。釜を上げ、初掃きをした後、羽箒を炭斗にのせ、畳敷合せ角に帛紗を置き、茶道口に戻り「お申し合わせの上、お炭を」と所望を致します。
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一問
31 名水点についてお尋ねします。茶入、茶杓を清めた後、帛紗はどこに置きますか。建水の後ろで宜しいでしょうか。また、名水の由来のお尋ねにお答えする場所は、居前、客付のどちらでしょうか。
一答
茶入、茶杓を清めた後、茶筅を茶碗から取り出して茶巾を釣瓶の左の蓋に置き、帛紗は建水の後ろではなく右膝頭に仮置きします。
名水点とはいえ、濃茶を差し上げることが主です。
由来についてお答えする場所は居前です。客付に向くと、濃茶の茶銘、詰、菓子等の客からのお尋ねに答えるのと同じ場所になってしまいます。点前は重複することを避けるため、名水の由来については居前からお答えします。
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一問
32 名水をいただく客の所作について、ご教授下さい。
一答
正客が縁内次客との間に茶碗を置き、次礼をします。次客が名水をいただいている頃を見計らって亭主に由来をお尋ねします。茶碗は出会いでなく、出された位置に末客から返します。亭主は茶碗を取り込み、主客総礼となります。
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一問
33 茶杓は象牙から始まったとのことですが、竹の茶杓を使うようになったのは何故ですか。
一答
これは珠光・紹鴎・利休と茶道というものの姿が徐々に見えだした時代に変わっていきました。
それまで全て中国風だったものを日本風に変えていこうとして、例えば台子を外した点前になり、皆具も使わなくなり、天目茶碗が国焼の茶碗になり、花入も唐銅から竹の物になったりと侘茶の姿を模索する中で変化が生じました。その中で象牙の茶杓も竹のものへと姿を変えていったわけです。
茶杓が何故、象牙から竹に変わったかというよりも、侘茶が生まれてくる過程で全ての道具が日本風に変わっていったということです。
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一問
34 『淡交』6月号から連載されております小習十六ヶ条の軸荘と軸荘付花月との帛紗と巻紙の扱いの違いについてお尋ね致します。
花月では「月」が床の正面に坐り、掛物を右手で取り、左手に持ち替え、帛紗を八ッ折にした後、小習、花月とも帛紗は懐中するのでしょうか、それとも右膝頭に置くのでしょうか。
一答
まず、床の上の荘り方が、小習は帛紗の上に外題を上にして掛物を荘り、挨拶の後、客の所望で水屋に下がり白菊扇を腰に差し床前へと進みます。花月の場合、掛物の左横に白菊扇を置いておきます。そこが違いますね。
小習の軸荘りは、左手に掛物を持ち右手で八ッ折にした帛紗を懐中し、巻紙は右膝頭に置き、掛物を掛けた後、扇子を腰に差し、巻紙を持って水屋に下がります。
さて、花月では、「月」は帛紗を右膝頭に仮置し、その上に巻紙を乗せて、掛物を掛けた後、扇子を差し、帛紗と巻紙を持ってかぎ畳を廻り、踏込畳敷合せ角に扇子と巻紙を乗せた帛紗を置き、客付に向き控えています。
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一問
35 電熱式の炉・風炉を使う場合も、香合を荘り、会記にも記入するのでしょうか。
一答
香合を荘る主旨は「炭手前をしてお茶を差し上げるところですが省略させて頂きます」との亭主の気持ちの表れです。したがって、電熱式のため炭手前は当然ありませんので香合はいらないかもしれませんが、一つの趣向として香合を床に荘ってもいいのではないかと思います。「荘りなさい」とか「荘ってはいけません」ではなく、あくまでその時の亭主の心入れで荘る、荘らないを決めていただいたらと思います。
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一問
36 茶箱の卯之花点前の茶会に招かれました。お道具の拝見はどのようにしたらよろしいでしょうか。お教え願います。
一答
そうですね。まず卯之花点前の道具拝見の基本は古帛紗を用いて致します。
棗、茶杓をのせた蓋と箱を引き、縁外に置いて次礼の後、蓋を縁外正面に置き、全体を拝見の後、古帛紗を蓋の右に広げて置き、棗、茶杓と拝見して、古帛紗に仮置きします。蓋を拝見して、棗、茶杓と蓋の上に戻し古帛紗を懐中し、蓋上の道具を見て次客に送ります。箱の拝見も同じく古帛紗を箱の右に広げ茶筅筒、茶巾筒を拝見し古帛紗に仮置きします。箱を拝見して、茶筅筒、茶巾筒と箱に戻し次客に渡し、末客と正客出合いで返します。一見、複雑のように見えますが、茶箱ならではの楽しみがあります。
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一問
37 茶席に入れてはいけない禁花があるとお聞きしましたが、どのような花を指すのでしょうか。
一答
南方録の覚書の内に
  花生はないけにいけぬ花、狂哥(歌)に、
  花入に入さる花ハちんちやうけ(沈丁花)
  太山みやましきミ(樒)にけいとう(鶏頭)の花
  女郎花さくろ(柘榴)かうほね(香骨)金銭花(金盞花)
  せんれいそう花をもきらう也けり
と具体的な禁花が挙げられています。しかし、これは絶対的なものではなく、時代により、また茶人の好みによって移り変わっていくものではないでしょうか。花の名前、音の響きや文字、または四季のうつろいを感じさせないもの、強い香りがあるとか、毒々しい色彩のあるものは避けましょうということです。
花の四清同しせいどうにある如く、青竹の清きを切り、清き水を張り、清き心をもって、清き花を入れることが大切です。
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一問
38 棚を用いて点前をした時、なぜ湯返しをするのでしょうか。
一答
棚を用いた場合、「湯返しをして柄杓の合の乾きをよくするのです」と覚えてしまいがちですが、棚の根本は台子にあると考えて下さい。台子地板の中に風炉、釜、水指、杓立、建水、蓋置、そして杓立には火箸、差し通しの柄杓が荘られます。これを総荘といいますが、この杓立に柄杓を戻す時、露を切る意味で湯返しをします。その姿があると思っていただいて結構です。
普通の棚の場合は台子・長板に準じて荘る、荘らないにかかわらず湯返しをします。ただし、小間に仕付けられた仕付棚、あるいは地板のない寒雲棚、寒雲卓、猿臂棚等、畳に直に水指を置く侘びた運びの点前では、棚に柄杓を荘る時でも湯返しはしません。
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一問
39 茶入の蓋に象牙を用いる意味、また蓋裏に金箔を貼る意味をお教え下さい。
一答
昔の中国の言い伝えに「象牙を毒物に近づけると自然に割れる」というのがありました。実際に割れることはないと思いますが、そのために茶入の蓋に象牙を用いたという説があります。実際、象牙の蓋の裏に金箔が貼られるのも、金箔と銀箔の両方とも毒気が近づくと箔が変色することから貼られていると文献にも出ております。加えて、象牙の蓋は当時からとても貴重な品で、中国でもインドやタイなどから輸入しなければ手に入りませんでした。そういうことで茶入の蓋には貴重な象牙を使い、なおかつ金箔・銀箔を貼ったのです。
蓋裏に銀箔が貼られた茶入は珍しいと思われるかもしれませんが、中興名物でいいますと、広沢手の茶入はそのようになっています。これは、広沢の池は月が有名ですから、月を映すという意味から銀箔が貼られていると言われております。広沢手の本歌は京都の北村美術館にあります。
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一問
40 鉄風炉の場合、赤の前土器(かわらけ)を使うのはなぜですか。
一答
鉄風炉というのはやつれた風炉で、中に藁灰を敷いたりしてとても侘びた風情になります。しかし、侘びすぎて寂びてしまってはいけません。藤原家隆の歌に、
  花をのみ待つらん人に山里の雪間の草の春を見せばや
という利休居士が思いを託した歌があります。また、藤原定家の
  見渡せば花も紅葉もなかりけり浦のとまやの秋の夕暮れ
という歌は、本当に何も無い状況ですが、利休居士はそれに対して「雪間の草の春を見せばや」と、雪だけが降る何もない寒い冬だと言っていますが、雪の下にはすでに青草が出てきているという生命力を感じ取ろうとして侘びの根本におかれた訳です。
鉄風炉の場合、赤の前土器を使うのは、侘びすぎないように、侘びが行き過ぎて滅びたような風情にならないようにということです。
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一問
41 薄茶の席で二種類の干菓子を出すのは何故ですか。お教え願います。
一答
景色として一つは打もの、一つは有平糖を合わせて変化を出します。濃茶席に対して薄茶席は気楽に楽しくゆっくりして下さいという思いを込めて懸けられます。濃茶があって薄茶があるというのが本来です。薄茶なら薄茶だけを考えるから難しくなる訳で、濃茶に対してどうぞお楽にお過ごし下さいということでおもてなしをします。目を楽しませる意味でも、打ちものと有平糖を一種類ずつ組み合わせてお出しするのは、亭主の心入れです。
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一問
42 竹蓋置の炉、風炉の違いについてお教え願います。
一答
これには諸説ありまして、利休居士の話を江岑宗左が書き残したものの中に、利休が根竹の蓋置を少庵、道安二人の前に出したところ、少庵は節なしを取り、道安は節ありを取ったという逸話があります。しかし、節が天にあるものを風炉に、中節のものを炉に定めたという逸話は、実はありません。
裏千家八代一燈居士より以前は、炉・風炉での蓋置の区別はありませんでした。
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一問
43 濃茶では、なぜ飲み回しをするのでしょうか。
一答
今も昔も一期一会を建立するために心入れのお茶を吟味しておもてなしをすることには変わりがありません。この貴重なお茶を皆で有り難く分かち合うということが、すなわち感謝の心を表すことになり、相互の信頼関係があってこそ一座建立にもつながる訳です。同時に、濃茶を練る前に行なわれる炭手前も、今から練られるたった一碗に合わせて火の勢いなどが調整されるのです。炭を置かれる方も、炭をつがれる方もその思いをもって炭手前をなさってください。
そのような様々な要素が絡みあって“ようやく出会える一碗だ”ということで飲み回しをするのです。
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一問
44 茶箱・月点前で、茶筅を立てる器具を「ウグイス」とお聞きしましたが、その名の由来をお教え下さい。
一答
『安斎随筆』十八巻の続後拾遺和歌集の中に
    「あかなくに折れるばかりぞ梅の花香をたづねてぞ鶯の鳴く」
という歌があります。その歌から後水尾天皇の中宮・東福門院様が使用済みの香包をさす竹や金属製の中央がやや太く丸みをもった棒状の香串をウグイスと命名されたという説があります。香を求めて止まるということからウグイスとされたようです。
後に玄々斎が月点前に用いる木据に茶筅を置くために香道のウグイスをU字形に曲げられました。
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一問
45 長板二つ置での点前では、竹の蓋置の方がよいといわれますが、何故ですか。
一答
長板の二つ置の点前は、長板があっても建水に柄杓・蓋置を仕組み運び出しで点前をしますね。運びの点前ですから竹の蓋置でいい訳です。青竹の蓋置というものは一回きりのものですので、あまり相応しくありません。
何故と申しますと、竹蓋置は利休居士が台子から小間のお茶に、点前を日本風の侘びたものに変えていかれた時に使うようになったものです。しかし青竹というのは前述しました様に一回限りのものですから、油抜きして白くしてしまいます。それに対して、使っていくうちに侘びた味も出てくるということで、また自分が選んできた竹でそれを一つの趣向として使えるようにと先匠方が花押を入れたのです。ですから長板の二つ置などは花押の入った竹の蓋置が好ましいということです。
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一問
46 棚を使って茶事をする場合、最初から棚を置いてよろしいでしょうか。
一答
初座から席中に棚を据えて構いません。
初座も後座も同じ景色ではと思われる場合はいささか配慮が必要ですが、後座から棚を据えるというのは如何なものでしょうか。
その点からいうと、運びの水指棚、寒雲卓などがありますが、初座では水指がなく後座で水指が置かれ、茶入が荘られると初座とは違った「しつらえ」が整えられます。これは亭主の趣向であり、約束事ではありません。
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一問
47 初炭所望についてお尋ねします。風炉では下火をいじらずに客に所望しますが、炉では下火を動かし湿し灰をまいてから所望するのは何故ですか。
一答
風炉の炭所望は初炭のみで、灰形がきれいな風炉中が乱れていない内に客に所望いたします。
一方、炉には風炉のように厳格な灰形はありませんが、炉中に湿し灰をまき、清め、整えてから所望するのが心配りといえましょう。
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一問
48 居前に座り柄杓を取り「鏡柄杓」をしますが、その意味をお教え下さい。
一答
これから一碗のお茶を点てるべく自分の「心」と身体の「構え」を整えるという意味で鏡柄杓をします。
宗家の大水屋に玄々斎が書かれた「稽古の席掟」が有ります。その中に「着坐運付とも体の備へ並に呼吸の考第一の事」としたためられています。点前に対する一貫した御教示ですが、まさに鏡柄杓こそ、この一点、瞬間ではないでしょうか。どうぞ鏡柄杓、充分にお稽古なさって大切にして下さい。
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一問
49 御園棚で点前をする際、柄杓は、右か左かどちらの手で取るのでしょうか。
一答
御園棚の点前では、使い勝手から近い方の左手で柄杓を取り、構えて蓋置を手前に寄せて釜の蓋を開けます。
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一問
50 瓢(ふくべ)を炭斗として使用する時、新しいもの、古いものとの使い分けについてお教え下さい。
一答
炉開きに使うのが主です。原則として炉開きに使うのはその年の瓢を切って使います。だから、やはり新しいものがよろしい。しかしその瓢に何か思いが込めてられている場合、例えば私どもの家では玄々斎が歌を書かれたものを炉開きに用いますけれども、それはしたためられたということに対して継続して使うことがいいのであって、ただ単に、「今年用の新しい瓢を探すのが面倒だから去年のものをそのまま使おう」というのでしたらあまり意味がないと思います。
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一問
51 正月に結び柳をしますが、その由来と二重切花入の上の段には花を入れずに水のみを入れる理由をお教え下さい。
一答
宗家で現在のような形の結び柳を入れられたのは玄々斎からと伺っております。御所へ参内の折に下賜された柳が長く、くるりと一巻、二巻されて持ち帰られたところ、その形が玉の姿になって縁起が良く、また非常に良い姿でしたので竹花入に入れられたことから始まったとのことです。丸く結ばれた姿は円を表し、十二ヶ月終わりのないことを意味する目出たいものともいわれています。なお、竹花入に水を入れると、柳が芽吹いて床の間を濡らしてしまうため、水は入れません。
二重切花入のご質問ですが、上の段に花を入れなくても水を入れるのは、水というものは天から頂戴するもらい水で貴いものだからです。感謝する気持ちから上の段には花を入れなくても水を入れます。
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一問
52 木地曲の建水の綴じ目の扱いについてお尋ね致します。居前に座り、建水から蓋置を定座に置き、柄杓を引いた後、綴じ目の向きを変えるのはなぜでしょうか。お教え下さい。
一答
木地曲物の綴じ目の扱いを丸前、角向うと覚えます。木地曲の建水の場合、綴じ目を手前(下座)にして、中に蓋置、柄杓と仕組みます。蓋置に柄杓を引いた後、風炉では膝頭いっぱいに、炉では炉縁の延長線半がかりにあげて、建水の綴じ目の部分を左手で持って、建水の内側の綴じ目が客付に向くように回しながら位置を正します。すなわち、客側から見て内側に綴じ目の細工が一つの景色になるようにする訳です。
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一問
53 お茶事でお酒の飲めない人はどのようにお断りしたらよろしいでしょうか。
一答
お酒は気分を和ますものですが、時として「礼に始まって、乱れて終わる」ともいわれます。亭主の好意は受けつつも、お酒の苦手な方は無理に飲まなくてよいでしょう。亭主は客組の際、どのお客がお酒が好きか苦手か存じているはずです。最近、石盃を持ち出したりしますが、行き過ぎると宴会になりかねません。あくまでも濃茶をいただくための懐石の中のお酒です。
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一問
54 茶杓荘についてお尋ねします。お道具を拝見に出す際に、古帛紗を用いますが、広間の場合、正客が引きに出る際には仕覆を取って茶杓を乗せ、古帛紗を懐中し、茶入を取るのでしょうか。それとも、仕覆を取り、その上に茶入を乗せて指をかけて、古帛紗ごと茶杓を取って自席に戻るのでしょうか。お教え願います。
一答
茶杓荘では亭主が茶杓を古帛紗に乗せて拝見に出しますが、広間の場合、正客は右手で茶入の仕覆を取り、左掌に乗せ、その上に茶入を乗せて指をかけ、古帛紗ごと茶杓を右手で持って自席に戻ります。拝見の仕方には広間、小間の違いはありません。茶入拝見に続いて古帛紗に乗せた茶杓を拝見し、次客に送ります。その際、基本的に茶杓を古帛紗から外し、古帛紗を拝見することはありません。
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一問
55 壺荘付花月で四客が月に当たった場合、折据は壺の紐を結んでいる四客をとばして仮座へ、また仮座から四客をとばして三客へ送って宜しいでしょうか。お教え願います。
一答
三客は札を取ると折据を縁内五つ目に止め、「松」の声で三つ目にあげます。四客は紐を結んでいる手を止めて仮座へと回します。仮座の札が折据に入れられると四客に渡し、三客へと回します。折据は四客を経由して回ります。
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一問
56 台子、長板総荘りで、薄茶・濃茶の点前の折に杓立から火箸を抜きますが、炭手前でなく、火箸を使用しないのに、なぜ抜くのでしょうか。
一答
総荘りの杓立から点前の折、火箸を抜き台子と勝手付の間に置くのは、点前をする上で柄杓の扱いに「差し支え」がないようにとの配慮からとお考え下さい。ただし、立礼の点茶盤点前では、火箸を塗りの上に直に置かないため、杓立から抜かないというのが約束です。
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一問
57 なぜお家元の正月茶を、“初釜式”と称されるのでしょうか。
一答
私のエッセイ『昨日のように今日があり』にも書きましたが、初釜式は宗家の咄々斎と名付けられた茶室で行います。
初釜式で濃茶を練らせていただくことは、浮つきがちになる日頃の視線をもう一度自分の源に向ける機会であります。この場で点前座に向うとき、私はこれをもてなしとしてではなく、歴代宗匠方の前で今年初めての“亭主の稽古”をさせていただいているのだと思っています。そして、その席にお招きした社中の方々には、“お客様役”を学んでいただいているのだと感じていただきたい。つまり、共にこのひとときはお互いの“稽古始め”なのです。それだからこそ、家元での正月茶を“初釜式”と言い慣わしているのです。
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一問
58 懐石道具、縁高に露(つゆ)を打つのは、炉・風炉の季節とも同じでございますか。
一答
炉の時期、懐石膳食器、そして縁高には露は打ちません。風炉の折、露を打つのは清涼感を醸し出すためです。ただし、朱盃には季節を問わず、露を打ちます。
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一問
59 二月に大炉を開くとお聞きしましたが、大炉とはどのようなものでしょうか。お尋ねいたします。
一答
大炉とは裏千家独自のもので、十一代玄々斎が田舎家の囲炉裏から創案されました。咄々斎の次の間六畳に逆勝手で切られており、二月の厳寒の時期にのみ炉を開きます。
普通の炉は、一尺四寸(約42.4cm)四方ですが、大炉は一尺八寸(約54.5cm)四方と大きいことから、大炉と名付けられました。
炉に向かって右手前寄りに五徳を据え、反対側の左向こう隅に雪の結晶の形をした雪輪瓦を立てて灰仕切りをします。炉縁は木地を用い、炉壇はねずみ色に仕上げます。炭の熱や大振りの釜から立ち昇る湯気で部屋を暖め、お客様に寛いでいただくために考案されました。
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一問
60 大炉の炭手前についてお尋ねいたします。初炭手前では炭斗に炭を組み用いますが、後炭手前では炭斗を使用しないとお聞きしました。後炭手前ではどのように炭を組むのでしょうか。
一答
大炉の後炭手前は、とりわけ風情のあるものです。初炭手前では雪輪瓦の向こうに湿し灰を盛って灰匙を立てておき、この湿し灰をすくって炉中にまきます。客が中立の間にこの場所に炭(輪胴・丸毬打・割毬打・丸管炭・割管炭・枝炭三本)を荘っておきます。従って、炭斗は使わず、二月の立春・節分の厄払いの際に用いる炮烙に湿し灰、灰匙、香、羽、鐶、火箸、組釜敷を仕組んで用い、侘びた風情を楽しみます。
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一問
61 陶器の灰匙を大炉以外で用いることができますか。
一答
大炉での灰匙は、大炉の灰仕切りのために用いる雪輪瓦の向こうに盛った湿し灰に立てておくものですので、陶器の灰匙を一つの趣向として用いることができます。また、釣釜や透木釜など、炉中に五徳を用いない時にも趣向として使用できます。ただし、これは約束事ではありません。
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一問
62 大炉の雪輪瓦の両面には、釉の掛かっている面と素焼の部分のある面がありますが、扱いに約束はありますか。お教え願います。
一答
宗家の雪輪瓦は慶入の作で、飴色で渦の彫りに色紙形の金箔が施されています。さて、ご質問の件ですが、炉中で火に面する方に釉が掛けられている面を向け、素焼の部分のある面を、初炭手前では湿し灰が盛られ、後炭では炭が組まれる方に向けます。
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一問
63 大炉は逆勝手で点前をしますが、初炭の炭斗の炭も逆に組むのでしょうか。
一答
まず、自分が炉に正対して、炭斗を右に置くか左に置くかを考えてみてください。炉に向かって右側に置く時は炭斗の炭は本勝手に組みます。四畳半出炉本勝手、台目出炉本勝手、向切逆勝手、隅炉本勝手、そして大炉がこの形となります。なお、逆勝手に炭を組む例としては向切本勝手初炭手前などがあります。
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一問
64 濃茶貴人点では、菓子器は縁高を用いるのでしょうか。それとも高坏(たかつき)でしょうか。お教え願います。
一答
縁高ではなく高坏を使います。高坏というのは足付きの杯や盤、折敷類の総称ですので多くの種類があります。
因みに、縁高の本来の色は黒または朱です。縁高にも色々な好み物があり、蒔絵のあるもの、七宝透かしのあるもの、木地で置上になっているものもあります。
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一問
65 釣釜の点前で棚を用い、五徳の蓋置を使う時の扱いをお教えください。
一答
建水に仕組む時は輪を上にし、二本の爪の間に柄杓の柄が沿うようにします。(図1)
炉辺定座に置き、柄杓の柄は爪と爪との間に引きます。(図2)
棚に荘る時は左掌に乗せ、右手で左から右に打ち返し、輪を下にして爪が正面に向くように(風炉中の五徳を据えた姿と同じように)して(図3)右手で荘ります。
   
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一問
66 貴人清次濃茶付花月についてお尋ねいたします。
貴人が次茶碗の濃茶を点て、次客の一啜で服加減をきき、釜に水一杓をさして自席に戻り、次茶碗の濃茶を詰がのみきると貴人から茶碗の拝見を請われます。その時の茶碗と札の位置をお教えください。
一答
自席に戻った貴人以下一同は次茶碗を拝見しますね。その後から折据を回すわけですが、仮座の詰は吸い切ると札の手前膝前に茶碗を置きます。貴人から茶碗の拝見を請われると受け礼をし、飲み口を清め、茶碗を反時計回りに回して正面を正し、札の向こう側に置き、次に替札を左、下座に置いてから茶碗を前に出し、にじって貴人の前に持っていきます。茶碗を持ったまま替札を動かすような扱いはいたしません。
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一問
67 釜に花押や文字が鋳込まれている時、釜の正面はどのように決めたら宜しいでしょうか。
一答
釜の文字が鋳込みになっているものは、その文字を正面にします。文字が釜の正面、向こうと両方にある場合は、書きはじめを正面とします。例えば、龍宝山と大徳寺とありましたら龍宝山を手前にし大徳寺を向こうにします。花押だけならそれを手前にし、文字と花押であれば文字を手前に花押を向こうにします。絵と花押なら絵を手前に花押を向こうにします。因みに、蓋に文字がある場合は読む位置を自分の方に向けます。蓋の摘みが動物であれば自分の方に向けます。
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一問
68 席中での禁句や話してはいけない内容等がありましたらお教えください。
一答
そうですね。正客になると何を話して良いのか悪いのか迷いますね。利休居士の弟子が書き残した『山上宗二記』の中に
「我仏 隣の宝 むこしゅうと天下のいくさ人のし」(連歌師 牡丹花肖柏)
という狂歌があります。一期一会の心で茶会に臨むわけですから、席中で俗世の世間雑談などをするのは遠慮すべきです。
玄々斎宗匠も“稽古之席掟”に、「一、雑談有之間敷事」と定められており、世事(世間)雑談を禁じられています。
しかし、あまり固く考えられますと、ますます何を話して良いのやらとなります。招かれた感謝の気持ちがあれば自然と会話は出来るものです。その場の雰囲気を損なわないことを念頭に楽しまれてください。
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一問
69 四月は透木釜を懸けて、いよいよ五月初風炉の季節を迎えますとお聞きしますが、透木釜は時代としては何時頃から茶席で懸けられるようになったのでしょうか。お教え願います。
一答
織田信長と松永弾正所持の平蜘蛛ひらぐも釜にまつわる話は有名ですね。
さて、すきしきが転化した用語だともいわれています。永禄十二(1569)年に利休居士の茶会に招かれた津田宗及が残した会記に、「炉一尺四寸 うば口平釜どだん(土壇)ニすへて 」とあります。
透木(敷木)が無いと空気の流れが悪くて火が熾きにくくなります。このことからしても、直接炉壇に釜の羽を懸けたとは考えにくく、実際は透木を釜の羽と炉壇の間に敷いたと推測されます。
茶会記によると、永禄年間には既に透木釜の普及がみられます。
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一問
70 透木後炭手前についてお伺いいたします。透木を炉壇に戻すのは、水次で釜に水を足し、濡れ釜にした後でしょうか、その前でしょうか。
一答
炭をつぎ終わり、畳中央まで廻り、左手で透木を取って右手で扱い、左掌に乗せて炉正面に廻って透木を炉壇に乗せます。次に釜を勝手付から上げた仮置きまで引き寄せ、灰器を水屋に下げて水次を持ち出します。
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一問
71 誠に初歩的な質問で恐縮ですが、お許し願います。
菓子をいただく際に懐中から懐紙を取り出しますが、炭手前の折の紙釜敷のように打ち返すのでしょうか。また、千鳥板も同様に打ち返すのでしょうか。
一答
懐は清浄なところですので、懐紙は懐からそのままお出しになり、畳の上に置いて菓子をお取りください。紙釜敷の打ち返しとは意味が違いますね。また、千鳥板も懐紙の間に入れて出す時は打ち返さずに使用します。
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一問
72 風炉濃茶点前の時、茶碗に茶を入れ、水指の蓋を開け、次に水一杓を釜に差してから茶碗に湯を注ぎますが、これはなぜでしょうか。点前の上での決まり事というだけでしょうか。その意味がありましたらお教え願います。
一答
前年5月に摘み取られた葉茶は、10月頃まで茶壷に「寝かせて」熟成させます。11月の開炉の時季には茶の香気が強く保たれていますが、5月の風炉の頃になると色香も次第に薄くなります。そこに沸き立っている湯を入れると茶の香気が抜けてしまいますので、風炉の季節には釜に水を一杓汲み入れて湯相を軟らかくし、茶の「うまみ」を損なわないようにします。
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一問
73 貴人清次花月についてお尋ねいたします。
貴人が仕舞花となり、点前座に進み四服目を点てて定座に出しますが、その後、四の「月」は茶碗を取りに出て一礼をしますか。また、茶碗を返す時に一礼がございますか。
なお、仮座の客が点前座の貴人に折据をすみかけ
・・・・で置く時、引く時に一礼がありますでしょうか。
一答
貴人の点てられた茶碗には一礼をしますが、茶碗を返す時、及び折据に対しては一礼をしません。
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一問
74 煙草盆の置かれる意味をお教え願います。
一答
お茶事の場合、待合、腰掛け、薄茶の時に出されます。薄茶の大寄せでは正客の位置に置かれます。
よく「煙に草」と書き表されますが、私は箱書きに「くさかんむりに良(莨)」と書きます。なぜそのように書くかというと、香りの良い草を煙管に詰めて一服ふかすという行為は、席中の空気を変える、場の雰囲気を和らげるという意味があります。濃茶での緊張感が薄茶になって少し和らぎ、さらに場の雰囲気を変えるために煙草盆を出して「家にいるようにゆっくりしてください」という訳です。
現在では、「吸ってください」ということではなく、「お気楽にどうぞ」という意味で置かれます。
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一問
75 大津袋についてお教え願います。
一答
大津袋というのは滋賀県の大津に因んだものです。利休居士夫人の宗恩様が大津から京へお米や穀物を運んでいた袋から考案されたためこの名があり、仕立て方に特徴があります。
利休居士は中国から渡ってきた「お茶」を日本風に切り替えるのに腐心されました。貴重な唐物の茶入ではなくて、日本特有の棗を濃茶器として使われましたが、その際に仕覆の代わりに何か入れるものをと考えた時、この袋(大津袋)がとても具合がよかったという訳です。
この点前は仕覆の添った茶入を持たない人のためのものではありません。それだけで立派に確立された点前です。包み帛紗も同様といえます。
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一問
76 「風炉の敷板を小間据えに置く時」という時の「小間据え」とは、どのようなものでしょうか。また、小間据えで風炉を据える時の敷板はどの位置になりますか。お教え願います。
一答


茶道口で一礼し、一歩踏み込んだ畳に風炉を据えることを小間据えといいます。畳一畳の時は向こうから六寸、十二目に敷板を置き、勝手付から七〜九目空けます。
因みに、台目畳の場合は、向こうから四寸空けて据えます。
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一問
77 荒目板を用いる場合、目の広い方を手前にするのは何か理由があるのでしょうか。
一答
木の年輪(木目)は中心の方が狭く、外になるほど広くなりますね。荒目板を用いる時に目の広い方を手前にするのは、その自然の姿を現しています。
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一問
78 仙遊之式・風炉について、お伺いいたします。
東から三客に炭所望をいたします。その後、正客が風炉中の拝見を請いますが、東も風炉中の拝見をするのでしょうか。
一答
亭主側でも本炭所望なので、東も風炉中の拝見をいたします。但し、且座之式の場合は略炭所望ですので、東は風炉中の拝見をいたしません。この点を混乱しないようにしてください。
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一問
79 会記の書き方についてお教え願います。特に道具の順序、一文字上げる下げる等のポイントをご教授ください。
一答
会記には、亭主自らが記す「自会記」と、客として招かれた際に備忘録として記す「他会記」があります。
ご質問は「自会記」の書き方のようですが、会記は“こう書かなければいけない”というより、亭主の思い入れによって書き方に違いがでてくるものです。
大寄せで大きく貼り出したりする場合は、「床」という字を一文字上げて少し大振りな字で書き、その後に他の道具を並べていきます。
「床」という文字だけが一段上っていてあとは横一線かというと、これは横一線でも下げても亭主の思いで変えていただて結構です。だいたいの道具の順序は、茶道誌等をご覧ください。
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一問
80 利休居士道歌に
  「濃茶には点前をすてて一筋に服の加減と息をもらすな」
とありますが、どのように解釈すれば宜しいでしょうか。
一答
濃茶だけでなく、薄茶も服の加減が第一です。特に濃茶を服加減よく練るには「濃茶たびたび点てて能く知れ」との道歌の教えの通り、湯加減と湯の量が第一となります。
「点前を捨てる」ということは「手順を無視する」ということではありません。
それまでにしっかり基本の所作を身につけておけば、いざ濃茶を練る際に脳裏で手順を追うことなく、ひたすら練ることに集中できる訳です。
また、「息をもらすな」、或いは「息を散らすな」と言い慣わしていますが、自然体の呼吸法とも言うべき考え方で、心身が平常なる様を表した非常に奥深いお教えです。もっと簡単に言えば呼吸をととのえるということですね。
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一問
81 七事式の「廻り花之式」をいたしました。このように花をめでる式は、いつ頃からなされているのでしょうか。
一答
『今井宗久茶湯抜書』には、天正十一年七月七日に秀吉の茶会が大坂城内であり、そこで廻り花がなされたことが記載されています。秀吉は芙蓉を、利休居士は花すすきと女郎花を、津田宗及は藤はかまを、今井宗久はじめ連客もそれぞれ花を入れています。
しかし、この抜書は江戸時代の茶人が原本から抜き書きしたものといわれていますので、七事式が確立し「廻り花」という言葉ができた後のものとすれば原本を読んだ筆者が「廻り花」と捉えて表記した可能性があります。
いずれにせよ、利休居士の時代から花をめで、皆で楽しんだその様子を想像すると胸打つものがあります。
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一問
82 初炭手前の折、香合が大きくて香合台に乗りにくい時は灰器と香合を一緒に持ち出すと聞いたことがあります。この場合、どのような扱いをすればよろしいでしょうか。
一答
このような場合、香合を左手に持ち、灰器を右手で持って出ます。そして灰器を膝前に仮置きし、右手で香合を定座に置き灰器を定座にという扱いになります。決して難しいことではありません。これは扱いやすいようにと定まったものです。
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一問
83 盆香合の時の盆に決まりはありますか。例えば、木地や真塗、大きさに決まりがありましたらお教え願います。
一答
香合が名物や由緒のあるものの場合、炭斗に組み入れず盆に乗せて持ち出すことがあります。この扱いを盆香合といい、あくまで初炭手前が約束となります。
盆に決まりはありませんが、香合を引き立てるような盆との取り合わせが必要です。香合と同じ色、あるいは同じ形の盆は避けた方がよいでしょう。
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一問
84 茶入荘についてお尋ね致します。
拝見に出す際、茶入には古帛紗を用いると教わりました。広間で正客が拝見物を取りに行く場合、茶入を両手で扱うと茶杓と仕覆を持って自席に戻れなくなりますが、このような場合はどのように扱えばよろしいでしょうか。
一答
四畳半を基準に考えられていますから、広間での持ち帰り方はあくまでも“はたらき”になります。
この場合、茶入を古帛紗ごと左掌にのせ、左手の親指を茶入の肩にかけて持ち、右手で茶杓を握り込み仕覆を右横から取って茶入にそわすようにして持ちます。
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一問
85 お道具の取り合わせの時に季節感を重んじるのは当然のことですが、同じ月でも地域によって季候が異なります。茶会を催す地域の季節感をもとに考えてよろしいでしょうか。
一答
そう考えてよいでしょう。釜を懸ける方が目に捉え、心に感じられ、そしてごく当たり前だと思っている風景をそのまま席中に活かしていただいたら結構です。9月を例にとると、本州はまだ暑いが北海道は秋が深まっていたりします。日本国中が暑くて残暑といわれているから北海道でも暑気払いのような趣向をしないといけないかというと、そうとは言い切れません。
お道具組みに際しては、その地域の季候で考えて下さい。
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一問
86 夏の暑さが厳しかったせいか、庭の草花の中には傷んでしまったものもあり、一輪の花を入れる際にも「あの花があれば、この花が使えたのに…」とあれこれ迷いました。
このような時、どういう心構え(気持ち)で花を入れたらよろしいでしょうか。
一答
そうですね。利休居士が「花は野の花のように」と仰っておられますが、村田珠光は「野山にえたる草木のていを学びて みぐるしきをきらう」と示されたそうです。
去年咲かなかった花が今年は庭先の蔭に一輪ひっそりと咲いたていをみつけた時の喜びと感動は言い表せません。花との出会い、これはお人、お道具と同じことです。一会の気持ちで臨まれたら如何でしょうか。
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一問
87 中置の点前は小間の席ではしないとお聞きしましたが、何故でしょうか。
一答
実際に小間の席で点前をされるとお分かりいただけますが、これは点前座の空間が狭くなるからです。
中置は四畳半以上の広間の席の点前ですが、本仕舞で仕舞いつけます。
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一問
88 五行棚では、仕舞付けが終わり、釜に水一杓を差した後、湯返しをしないのは何故でしょうか。
一答
「棚に柄杓を荘る時には、必ず湯返しをするのが約束」と覚えると間違いが生じます。
水指が運びの点前の場合や、地板が無い棚の時は柄杓を荘る荘らないにかかわらず湯返しはしません。五行棚でも水指は勝手付に置きますね。これは水指が運びの点前の時は湯返しをしないという約束からです。但し、長板一つ置きは例外となります。
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一問
89 後炭手前で釜の蓋を茶巾で清める時、釜の蓋の摘みを軽く押さえるのは、何故でしょうか。
一答
濡れ茶巾で釜の蓋を向こう手前と清める時、釜の蓋が動かないように軽く押さえます。釜肌を濡らし、そこから清らかな湯気が昇るのは何ともいえない風情ですね。
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一問
90 炉縁についてお尋ねいたします。木地と塗りでは時代的にどちらが先に使用されたのでしょうか。
一答
炉縁は、畳を炉中の火と熱から守る囲炉裏の木枠に相当します。
古い会記には炉縁の記載がありませんね。これは、あくまでも釜が主であり、炉縁は鑑賞の対象ではなかったからと思われます。
特に炉の寸法が利休居士の頃に一尺四寸と定まるまでは、柱や梁と同様、室内の木材の一部としての感覚だったようです。
広間にも炉が切られるようになってから、塗りのかまちの要素を採り入れられたのだと思われます。蒔絵等のものは時代が下がります。
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一問
91 茶壷の拝見についてお教え願います。
末客が壷の拝見を終えて正客に戻す時は、他の拝見道具と同じように“出会い”でしょうか。
また、壷の拝見の際に両手の指先で扱うのは何故でしょうか。
一答
末客は茶壷の拝見を終えると、壷の正面封印を正客に向けて直接正客に戻します。正客は今一度正面封印をあらため、亭主に正して、自分からは立たずに亭主が取りに来て戻すことになります。
網をはずされた壷を扱う時に掌を用いず両手の指先で扱うのは、壷の中の葉茶に熱や湿気を呼ばないようにするためです。これには茶壷の葉茶に対する扱いの丁重さがよく表れています。
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一問
92 炉で棚を用いて盆香合を行う場合、炭斗はどこに置いたらよろしいでしょうか。
一答
炭をつぎ、後掃きをした後に羽箒を炭斗へ戻し、炭斗を持って貴人畳の角に置きます。
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一問
93 入子点では木地曲の建水に茶碗を仕組みますが、塗りの建水ではいけませんでしょうか。
一答
以前(52)に木地曲建水の綴じ目についてお答えしましたね。
入子点では建水の中に茶碗を仕組みますので、清浄を第一とした木地曲の新しいものを使用し、原則として塗物は使用いたしません。
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一問
94 筒茶碗と絞り茶巾の扱いについてお教え願います。
一答
筒茶碗は、寒い時期、亭主がお客様にあたたかい心尽くしのおもてなしをする際の趣向の一つといえます。
筒茶碗の清め方は、利休居士道歌に
  「筒茶碗深き底よりふき上り 重ねて内へ手をやらぬもの」 
とありますように、いつもの茶碗のように縁から先に清めますと底を清める時に指先が茶碗の内部に触れますので、このような扱いになります。
絞り茶巾は、茶巾を隅かけに取って絞り、その端が向って左になるように筒茶碗の中に入れ、茶筅、茶杓と仕込みます。
茶碗に湯を入れ、次に絞った茶巾をたたみ直した後、茶筅通しをします。

筒茶碗の時に必ず絞り茶巾をするとは限りません。あくまでも趣向です。
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一問
95 茶碗荘についてお伺いいたします。
@亭主は濃茶を練り終わると茶碗を古帛紗にのせて正客にお出ししますが、樂茶碗の場合でも古帛紗は使用しますか。
Aまたその際、正客は亭主から出された古帛紗をそのまま拝借すべきでしょうか。
それとも自分の古帛紗にのせ替えた方がよいでしょうか。
一答
@名物や由緒のある茶碗に対する扱いとして古帛紗にのせてお出しする訳ですから、樂茶碗でも他の茶碗と同様に古帛紗を使用します。
A@でお答えした理由の通り、のせ替えはいたしません。そのまま古帛紗に茶碗をのせたままお茶をいただきます。
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一問
96 “茶碗荘は濃茶で行うもの”と習いましたが、薄茶でしてはいけませんか。お教え願います。
一答
荘り物はあくまでも濃茶のものですので、薄茶ではいたしません。
但し、薄茶の茶筅荘については、応用としてすることができます。
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一問
97 重茶碗のお客を八人でいたしました。一碗目を三人、二碗目を五人でいただきました。一碗目を正客から三客でいただいた後、三客は茶碗を正客に戻し、正客から末客まで順次拝見しました。二碗目を取りに出た四客はお茶をいただき、末客は茶碗を正客に戻し、正客から末客まで順次拝見しました。
亭主にお返しする茶碗を出合いで戻すのは、どなたになりますでしょうか。
一答
二碗目を取りに出た客(四客)が正客でないことは言うまでもありません。
亭主にお返しする茶碗の出合いは、一碗目、二碗目とも正客と末客とになり、正客が亭主にお返しします。
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一問
98 貴人点を終えて貴人茶碗をひき、茶道口で貴人茶碗を置き、貴人に一礼するのでしょうか。お教え願います。
一答
貴人点では、薄茶、濃茶とも茶碗をひいて茶道口で一礼することはありません。
貴人に一礼するのは“貴人清次”の場合です。
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一問
99 初炭所望についてお伺いいたします。風炉では下火をさわることなく客に所望しますが、炉では下火を動かし湿し灰をまいてから所望します。なぜ風炉と炉でこのような違いが生じるのでしょうか。
一答
少々難しいご質問ですが、茶事では、風炉の場合は懐石の後に炭手前となりますので、懐石の時間の分、風炉中の下火はその熾り具合が毎回異なります。所望する亭主は、所望された客が下火を如何に濃茶のための火相を整えるべく置き直し、続いて炭をつぐかどうかということまで委ねているのです。
それに比して、炉の場合は懐石の前に炭手前となりますので、下火が崩れているということはありません。従って、亭主は下火も動かし湿し灰もまいて炉中をすべて整えてから所望した客に炭をついでもらうという訳です。
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一問
100 釜の大蓋・中蓋の扱いについてお教え願います。
一答
大蓋はだいたい直径が五寸より広いものをいいます。
柄杓をひく時は蓋置を常の如く縁外畳目三ッ目に置きます。釻付まで蓋置をすすめて釜の蓋の口に渡しかけて取ることもありますが、これは巧者の扱いといえます。釜の蓋を取る前に蓋置を縁内七ッ目くらいに取り込んで蓋を置きます。
中蓋は五寸くらいの蓋の名称で、柄杓をひくのは三ッ目ですが、釜の蓋を置く時は縁外、炉縁と畳の縁から五ッ目に直して取ります。
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