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原点に戻る

千 宗室

  今年の上半期には、あちらこちらで少しずつ茶会が始まりました。また国からはマスクの着用についてそれぞれの判断に委ねるという指標が示されました。とはいえ、この先もウィズコロナの中で私たちは工夫を重ねながら生活をしていかなければならないような気もいたしております。
  もともと日本は諸外国に比べて衛生観念がしっかりした国です。しかしこれからの茶の湯は今までの生活に簡単には戻れないという前提で、釜を懸ける亭主にはいろいろな趣向を同居・・・・・・・・・・させる器量が求められていくことでしょう。「これで大丈夫だ」と自分を納得させても、お越しになるお客様の中には大らかな方も、いささか神経質な方もおられます。さまざまな条件を加味した上でどのように気を配るのか、亭主が責任を持って決めなくてはなりません。
  たとえば大寄せの茶会は今まで、「大寄せだから仕方ない」というような甘えがあったかもしれません。しかし、振り返ってみれば大寄せが始まった時代にそのような見切り発車がなされていたでしょうか。これから茶の湯の世界が少しずつ元に戻っていく中で、ついこの間ではなくもっと前の姿にまで戻す気持ちを私たちが持ってこそコロナ禍を経験したことが本当に生かせるようになるのだと思います。耐えて苦しみ辛抱し、大切なことに気が付く。そのような機会にしていかなければなりません。
  皆さん方には試行錯誤の中で原点を目指してしっかり茶の湯に向き合っていただきたいと願っております。

淡交タイムス 7月号 巻頭言より