千 玄室大宗匠、オーストラリアを訪問
カウラにて「怨親平等日豪戦没者慰霊献茶式・慰霊祭」

  千玄室大宗匠は在豪日本大使館並びにカウラ豪日協会など各方面からの要請に応え、9月8日〜16日までオーストラリアを訪問、首都キャンベラ、カウラを中心に「2006年日豪交流年」記念行事を行われました。



  9月9日(土)オーストラリアに到着された大宗匠は、乗り継ぎのため立ち寄られたシドニー空港では川田司在シドニー総領事、また目的地のキャンベラ空港では上田秀明駐オーストラリア特命全権大使の出迎えを受けられました。夕刻からは大使公邸で開催された「日豪友好茶会」にて、マイケル・ジェフリー豪州連邦総督夫妻はじめ、キャサリン・ハリス豪日交流基金理事長夫妻(日本では国際交流基金にあたる)、ヒュー・モーガン 豪日経済委員会会長夫妻(日本では経団連にあたる)、イアン・チャブ オーストラリア国立大学学長夫妻(オーストラリアでは唯一の国立大学)、オドネル退役陸軍中将夫妻等、上田秀明大使夫妻、川真田一穂公使夫妻に一碗のお茶を差し上げられ、和やかな一時を持たれました。

日豪友好茶会ジェフリー豪州連邦総督夫妻



  翌10日、オーストラリア国立美術館フェアファックス講堂にて「Chado and Japanese Culture」と題して大宗匠が講演され、続いて茶道デモンストレーションを行われました。
  同行事は国立美術館が主催して開催されたもので、ロシア、韓国等数カ国の大使夫妻を始め、キャンベラだけでなく遠くシドニー、メルボルンなど各地から聴講者がありました。
  アダム・オーラム副館長の歓迎の挨拶、上田大使による紹介を受けて登壇された大宗匠は講演と茶道デモンストレーションを通じて「茶道」について判りやすい言葉で解説されるとともに、聴講者からの切れ目ない質問のひとつ、ひとつに丁寧に答えられました。


講演


  また、同美術館内テンポラリー・エキジビション・ホールでは、茶道裏千家淡交会シドニー協会、同メルボルン協会、同カウラ協会、裏千家ブリスベン連絡所の有志による呈茶席が設けられ、聴講者だけではなく、美術館の来場者にもお茶が振舞われました。


呈茶席


  キャンベラでは正式な茶道紹介は初めてであり、反響の大きい行事となった。


カウラ戦没者墓地


  9月11日、カウラ市を訪れた大宗匠は、カウラ戦没者墓地において「怨親平等日豪戦没者慰霊献茶式・慰霊祭」を執り行われました。
  第二次世界大戦当時、ここには捕虜収容所があり、1000人を超える日本兵が収容されていました。日本軍の敗色が濃くなる1944年8月5日未明、捕虜が脱走をはかり約350名もの死傷者が出るという最大級の捕虜脱走事件が起こり、死亡した日本兵はカウラ戦没者墓地に埋葬されました。この日本人墓地設置を機縁に、カウラ市民有志による、日豪関係修復の機運が高まり、両国永遠の平和と友好のシンボルとして、日本庭園が建設されました。さらに日本人戦没者墓地から日本庭園へと続く約5キロの道路沿いには、桜の植樹がおこなわれ、大宗匠も桜の樹を寄贈されました。また、日本人戦没者墓地には祈祷台を寄進されました。
  毎年この桜並木が満開となる 10月には桜祭りが開かれ、茶道を始めとする日本文化や武道が紹介されるようになり、昨年に淡交会カウラ協会が発会しました。


怨親平等日豪戦没者慰霊献茶式




  カウラ戦没者墓地にて大宗匠は献茶式に先立って犠牲になった日本人234名、オーストラリア人4名の慰霊碑に献花されました。

献花


  黒住教黒住宗晴教主が斎主として神事を進める中、大宗匠は濃茶二碗をそれぞれの慰霊碑に謹点されました。
  ブルース・ミラー カウラ市長夫妻、川真田一穂公使、ドン・キブラー カウラ豪日協会会長の他、カウラ市民、高校生等約120名が参列しました。

大宗匠寄贈の桜


  大宗匠は、短い滞在にもかかわらず、この他スティーブ・ゴウワー戦争記念館館長の案内により無名戦士の墓への献花、淡交会シドニー協会林眞彰会長夫妻、同メルボルン協会レイ・ヒル副会長夫妻、同カウラ協会ドン・キブラー会長はじめ各協会の役員、会員との懇親夕食会等々精力的に活動されました。


戦争記念館献花