千 宗室家元 フランス訪問


  2月11日から15日、千 宗室家元は家元継承後初めてフランスを公式訪問、茶道紹介行事を行われました。この度の訪問は、折りしも開催中の「薩摩焼パリ伝統美展」のクロージングイベントとして、フランス国立陶磁器美術館(セーブル美術館)からの要請に応じる形で実現したもので、故伊住宗晃宗匠の長男・公一朗氏、裏千家調査役・淡交会理事の大谷宗裕氏が同行されました。




  2月13日、家元は、飯村豊・駐フランス日本国特命全権大使の招待を受け、伊住公一朗氏、大谷宗裕氏、また家元の訪仏に合わせてパリ入りをされた薩摩焼十五代の沈壽官氏(淡交会鹿児島支部副支部長)とともに大使公邸を訪問、裏千家とフランスの関わり、日仏交流等について飯村大使夫妻、山田文比古在フランス日本国大使館公使等と和やかに懇談されました。




  その後、午後3時から、家元はフランスにおける日本文化の発信拠点であるパリ日本文化会館での「日仏こども交流茶会」に臨まれました。




  「日仏こども交流茶会」は、次代を担うこどもたちに茶に接する機会をとの家元の発案により実施されたもので、パリ在住の8〜16歳のこどもたち60余名が参加、パリ日本文化会館でも初めての試みでした。




  まず、フランス語のスーパーを入れたビデオ「お茶会に招かれて」を全員で視聴、中川正輝パリ日本文化会館館長の歓迎挨拶に引き続き、千宗室家元は「昔の日本の暮らしは便利ではなかったが、ひとつひとつに手をかけて手作りをしてきた良さがあります。お茶も同じで、インスタントという考えは無く、ひとつひとつが手作りです。茶道は日本文化のポータルサイトであり、皆さんはお茶を通じてさまざまな日本文化に出会えます。今日一日の体験をぜひとも楽しんで下さい」と挨拶されました。




  こどもたちは、裏千家寄贈の茶室「好日庵」で畳に座っての呈茶体験、机と椅子での点茶体験、菓子作り体験の3つのコーナーを順番に移動、家元は終始茶室でこどもたちと交流、畳の文化から日本の伝統的生活スタイル、お茶・お菓子・道具・点前などについて、わかりやすく解説をされました。家元がこどもたちの問いかけに耳を傾けられ、ひとつひとつ丁寧に答える姿が印象的でした。




  点茶体験のコーナーは、伊住公一朗氏、大谷宗裕氏が担当、こどもたちは器用に茶筅を使いこなし、隣の子のために一碗をたて、更には一碗をいただきました。




  菓子作り体験のコーナーでは、京都の有職菓子店「老松」の主人・太田達氏の指導の下、こどもたちは、こなしと餡を材料にヘラや布巾を使って思い思いに菓子作りを楽しみました。




  閉会にあたり、家元は、「お茶もお菓子もはじめてのことで驚いたかもしれませんが、日仏交流150年の記念の年でもあり、今後も会館の利用を通じて両国の友情を育んでください」と希望されました。

  翌14日、家元はフランス国立陶磁器美術館小ホールにおいて、講演と茶道紹介をされました。
  フランス国立陶磁器美術館(セーブル美術館)はヨーロッパ最古の陶磁器専門の美術館です。
  1867年に開催された第2回パリ万国博覧会に出品された薩摩焼が、その繊細な美しさにおいて特に好評を博し、昨年が、この第2回パリ万国博覧会から140年目に当たることから、沈壽官氏らが協力し、同美術館で「薩摩焼パリ伝統美展」が開催されることになりました。




  開会に先立ち、家元はお手伝いのパリ協会メンバーと懇談、労いと励ましの言葉をかけられました。
  フランソワ・コシェスコ‐モリゼ セーブル市長夫妻、飯村豊大使夫妻等の来賓、一般参加者約120名が来場、アントワネット・アレー館長の紹介の後、その後、家元の解説で茶道デモンストレーションが行われました。




  まず、軸が掛けられ、ついで花が生けられ、客が席入りしました。家元は日本人の日常生活、茶の成り立ち、道具組みや茶席の設え、茶の精神等について、現代の生活感覚と対比させながら解説されました。正客は伊住公一朗氏、次客は大谷宗裕氏、詰は堤宗穂パリ駐在講師が務めました。




  つづいて、「茶道は日本文化のポータルサイト」と題する講演では、日本が島国であったからこそ生まれた精神や文化から話しを説き起こされ、「わび」「さび」に代表される概念が自然との対話によって生まれたこと、物事の移り変わりや滅びに対する美意識の問題、禅に関することなど多岐にわたる内容を平易に話され、最後に、「日本文化のポータルサイトとしての茶に触れてください」と講演を締めくくられました。




  講演終了後、裏千家淡交会パリ協会メンバーによる呈茶が行なわれました。