千 玄室大宗匠 アラブ首長国連邦アブダビを訪問
〜アブダビ首長国ムハンマド皇太子殿下の招聘を受けて、多彩な行事を開催〜




  千 玄室大宗匠は、アブダビ首長国ムハンマド皇太子殿下の招聘を受けられ10月16日から22日までアラブ首長国連邦首都のアブダビを訪問され、同殿下、同妃殿下への献茶を始め、未来フォーラム(BMENA)出席の各国外相方を招いての茶会開催などの多彩な行事を行われました。

  日仏交流150周年並びに京都パリ姉妹都市締結50周年記念「相国寺・金閣・銀閣名宝展」献茶式を前日の15日になされた大宗匠は、10月16日深夜、パリよりアブダビに到着されました。

 ◇未来フォーラム茶会
  中東・北アフリカ地域の民主化促進に向け主要8カ国(G8)及び中東・北アフリカの外相ら閣僚級が出席してアブダビで開催された「未来のためのフォーラム」の会合に先立ち、フォーラムの公式行事として18日夜に日本・UAE両国の外務大臣の主催で茶会が開催されました。


エミレーツパレス・ホテルベドウィン式テント内に設えられた茶室


  フォーラム会場のエミレーツパレス・ホテルのテラスに、ベドウィンの伝統を醸し出す巨大なテントが建てられ、その中に、京都より持ち込んだ八畳の組立茶室、それに人工のコケと石で坪庭が設えられ、本格的な和空間が出現。
  午後7時、会議参加者及び関係者ら100人が会場入りをされ、日本の中曽根弘文外相に続いてムハンマド皇太子殿下の弟君でもあるアブドラUAE外相が席に入られ茶会の開始となりました。波多野琢麻駐UAE日本国大使より紹介を受けられた千 玄室大宗匠は「お茶は緑です。緑は地球です。一碗から地球の大切さを感じて頂きたい」と挨拶され、茶室に上がられました。最初の一碗は、中東地域の平安を祈って、未来フォーラムのシンボルに捧げられました。続いて中曽根外相、アブドラ外相に大宗匠が茶を献じられ、順次、出席者に供されました。
  その後、アブドラ外相が大宗匠の指導で点前に挑戦され、そのお茶を大宗匠が召し上がる等、一碗のお茶を介して和やかな雰囲気の中、地域の未来を考える会議に相応しい友好交流を感じる茶席となりました。


中曽根弘文外相







点前にチャレンジされるアブドラ外相


 ◇ムハンマド アブダビ皇太子殿下への献茶
  19日の正午、皇太子宮殿に入られた、大宗匠はムハンマド皇太子との単独会見に臨まれました。
  皇太子殿下は武士道など日本文化に造詣が深く、今回の献茶日程は半年前から殿下自ら指定されるなど茶会への期待を伺わせるものでありました。皇太子殿下は日本よりはるばる来訪した大宗匠に敬意を表され、大宗匠は、「茶道とは信頼関係や心と心のつながりを築く道です。私の先祖は戦争などが多い時代に茶道を作り、侍達に茶室に入るときは刀を持たせないようにしました。茶室に入る前に、たとえ侍さえ刀を入り口に残すことをさせたのです。そこから信頼感が生まれ、平和につながるのです。」と説明され、またアブダビが日本にとって大切なパートナーであり、今後は茶道を通じての交流を継続されたい旨を伝えられました。
  皇太子宮殿には本格的な四畳半の組立茶室が設えらました。ムハンマド皇太子殿下は、カルドゥーン・ムバラク長官始め数名の側近と茶席に入られ、大宗匠の点前が始まりました。
  呈茶の後に、大宗匠は皇太子殿下に茶室に入られることを勧め、今度は点前の手ほどきをされました。
  殿下の点てられた一碗を、大宗匠が飲まれ、茶室内は「一客一亭」の大変和やかな雰囲気の中、初めての訪問とは思えない終始和やかな雰囲気に包まれました。皇太子殿下は日本の伝統文化・茶道を大いに堪能されました。
  この茶会は地元メディアも取材、テレビのニュースや新聞紙上で大きく取り上げられました。


ムハンマド皇太子との単独会見








 ◇大学生対象の茶道講演会
  日本文化を、明日を担う大学生に紹介してもらいたいとの皇太子殿下の意向を受けて、茶道講演会が20日午前、アブダビ郊外のアブダビ文書研究センターに於いて開催されました。
  会場のホールには、アブダビの各大学から選抜された大学生、在留邦人ら200人が来場し、熱心に聴講しました。大宗匠の講演後には、業躰及び随団メンバーによる茶道プレゼンテーションと呈茶が行われました。質疑応答の時間では、質問者が先ずアブダビへ文化紹介に来て頂いた大宗匠に敬意を表するなど、相手を思いやる茶道の心が既に備わっており、イスラムの人々にも十分に茶道が理解されることが期待されました。
  講演終了後には呈茶が行われました。菓子と抹茶を味わい深く口にし、日本の心と味に触れた学生達は、舞台上の畳に座ってみたり、随団メンバーに質問をしたりする光景が長く続きました。


アブダビ文書研究センター






 ◇政府閣僚を迎えての茶会
  20日の午後2時半から、波多野大使が、政府閣僚、外交団を招いての茶会を大使公邸にて開催し、大宗匠の点前で、来場された30人の方々に呈茶されました。
  冒頭、波多野大使が挨拶され、その後に大宗匠が御園棚での立礼の点前をされ、最初の一碗がルブナ・ハーリド・アル・カーシミー対外貿易大臣に供されました。
  呈茶の後には、カーシミー大臣が茶筅を振られてお茶を点てられる場面もあり、同席された方々も興味深く大宗匠の茶道の説明に耳を傾け、茶会は和やかな雰囲気のうちに終了しました。






 ◇皇太子妃殿下への献茶
  21日の午前、今回のアブダビでの最後の行事となるサラマ皇太子妃殿下への献茶が行われました。アブダビでは、皇太子と皇太子妃殿下は別の宮殿に住まわれており、慣習上、男女同じ席で行事をすることができなかったため、19日の皇太子殿下への献茶とは別の日に、別会場で行われました。
 会場のシェーハ・シェーハの宮殿に、再び四畳半の組立茶室が設えらました。
  通常は、「男子禁制」の女性だけの宮殿ですが、大宗匠は「芸術家」であるからとの理由で、特別に入城が認められました。
  午前10時過ぎより、王族の女性ゲストが次々と会場入りされました。
  大宗匠の点前で献茶が始まり、最初の一碗が皇太子妃殿下に献じられました。
  妃殿下は初めて口にされる緑色の抹茶を味わい深く喫され、その後に100名を超える参会者全員に一碗が振るまわれました。
  妃殿下方は非常に茶道を気に入られ、大宗匠はもとより20数人に及ぶ裏千家茶道ミッション全員に昼食を用意されるなど、アブダビのホスピタリティーを示されました。

  大宗匠は、こうして4日間で5つの大行事をされたわけですが、どの行事でも確かな反響があり、これからの文化交流に確かな手応えを感じるアブダビ訪問となりました。